「他社に比べてコストダウンのやり方が生ぬるい」

「我々は他社に比べてコストダウンのやり方が生ぬるい。あまり喜べる状況ではないと思う」

決算発表するスズキの鈴木修会長兼社長。名物の講談調の語り口も滑らかだった。

5月9日に行われたスズキの決算説明会。記者からの質問の大半を受け応えたのは、鈴木修会長兼社長。ディーゼルエンジンを通じてビジネス上の取引があるフィアットのマルキオンネ会長がスズキを高く評価しているがという質問に「そんなのはね、お世辞ですよ」と口さがなく発言し、集まった記者を笑わせるなど、名物である講談調の語り口も滑らかであった鈴木氏が最も厳しい面持ちを見せたのが、この言葉を発した時だった。

2013年度の決算は、価格帯の安い軽自動車やコンパクトカーばかりを手がけているメーカーとしてはかなり良いスコアだった。売上高2兆9383億円、営業利益は1877億円。営業利益率6.4%は、車1台の平均売価がスズキよりはるかに高いホンダの6.3%をも上回る数字だ。

しかし、国内市場における最大のライバル、ダイハツ工業が、売上規模はスズキよりはるかに小さいにもかかわらず、営業利益率7.7%を達成している。そのダイハツに比べると、収益力で見劣りする。利益率を上げる方法としては、利幅の大きな高価格帯のモデルの販売を増やすという方法もあるが、小型車中心のスズキにとってはそれは現実的ではない。コストダウンの推進が、スズキが利益を積み増す唯一の方法なのだ。

スズキは長年、世界最大の自動車メーカーであった米ゼネラルモーターズの傘下に入っていたが、08年のリーマンショックの後、GMが持ち株すべてを売却したことで傘下から外れた。09年にはドイツのフォルクスワーゲンと包括提携関係を結んだが、この関係も11年に破綻。現在は事実上、単独での生き残りを余儀なくされている。