「新興国は狭い道が多く、軽自動車のほうが便利」
「競合モデルを調べて対策を打つVA/VE(価値評価/価値工学)のような考え方はもう限界に来ている。プラットホームの共通化など、いろいろな点が他社に比べて後れをとっている。コストダウンのやり方そのものを変えないといけない。その方法は今、模索中だ」(鈴木氏)
もっとも、スズキのクルマづくりは技術的に他社に劣っているわけではない。とりわけハイブリッドカーやディーゼル車といった新世代エコカー以外の、普通のエンジン車の燃費競争では、トップグループの1社である。4月、スズキは同社のクルマづくりの展望に関する技術説明会を行った。その中で現在、排気量1リットル以上1.5リットル未満の非ハイブリッドクラスで燃費トップを守っているコンパクトカー「スイフト」のエンジンの平均熱効率(ガソリンを燃やした熱を運動エネルギーに変換する割合)が33~34%であることを明かした。
この数字について、トヨタのエンジニアは「ピーク効率が37%強というのもなかなかですが、JC08モード走行時の平均が33%以上というのは正直、すごいと思う。我々はピークでは38%を達成してトップに立ちましたが、平均では先を行かれている」と舌を巻く。
鈴木氏は、そのエンジン設計技術の急速な進歩を背景に、新興国に軽自動車を売り込む戦略も明らかにした。
「新興国は狭い道路が多く、本当は軽自動車くらいの大きさのクルマが便利。エンジンも大きいものではなく、660ccで行けるのではないかという手応えを感じている」(鈴木氏)
現在の軽自動車は、横幅は狭いが前後方向のスペースはとても大きく、普通車のなかでも中型セダンと同等かそれ以上の広さを持っている。新興市場のひとつで国民車構想を打ち出しているパキスタンが軽自動車規格の採用を検討。また、他の国でも軽自動車の持っている商品力をしっかりアピールできれば、日本市場と同じように受け入れられる余地は十分にあるとみているのだ。
スズキの2014年度の業績見通しは売上高3兆円、営業利益1880億円。営業利益率は今年より少し下がって6.3%となる見通しである。原価低減は13年度並みの250億円を見込むが、低減幅を積み増すことができれば営業利益の拡大に直結する。果たして鈴木氏の“豪腕”がコストダウンにどう活かされるか。それ次第では、業績の上振れも期待できるだろう。