旅行好きで、退職後2年で全都道府県を制覇。自らガイドブックを書くほど土地に精通。SNSで多くの20代女性と知り合い、リゾート地で遊んだ。が、実入りはよくて月10万円。退職金を加えて1000万円あった貯金は2年で半減。ハローワークの求人も、40過ぎはほぼNG。流れ着いた職場は介護施設だった。

基本給14万円に夜勤を入れて月平均18万円。夜勤の折は、老人30人のワンフロアを1人で見た。「精神的にしんどかった。老人と話は通じない。気が付くと床が糞尿で水浸し。患者への虐待が起こるのもわかる気がする」。

「給料が上がる要素ナシ。この世界で“壽退社”するのは男。相手の親に知られるとまずいから、転職するんです」

次の職を決めぬまま、1年で辞めた。唯一の財産・マンションのローンのボーナス払いが滞る恐怖。それをどうにか鎮められたのが、現在の職場だった。

「派遣としては恵まれたほう。ただ、1日休むと1万数千円実入りが減る」

母親はすでに亡い。姉夫婦と同居する80代の父親は、今も日本中を車で一人旅する。血筋といえば血筋なのか。

「職場の電話はいつも事故の話ばかりだから心配になる。父や姉と今後の話もしておきたいが、介護の資格を持ってるこちらに振られるのが怖い」

今は交際相手もいない。今の仕事を続けるつもりもない……と言いつつ、「いつか石垣島に住みたい」と漂泊の思いはやまぬようだ。

(石橋素幸=撮影)
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