私自身、毎朝必ず家族のために朝食を作っている。もっとも、ごはんと味噌汁、プラス1品程度だが……。それでも、自宅で素材から料理を作るということは、大げさに言えば下流に転落することを防ぐ、あるいは下流から脱出するための「階級闘争」の手段なのである。
実際、冷蔵庫にある材料で手早くおいしいものを作ろうと思ったら、計画性や応用力が必要だ。これは仕事も同じだろう。限られた時間や予算のなかで、ある程度の結果を出さねばならないのだから。
しかし下流の人たちは、この種のちょっとした準備や段取りをするのが苦手だ。
以前、私のところに「下流3人組」のようなアルバイト学生が来ていた。彼らは美大生で、パソコンを使ってデザインをするからCD-ROMを大量に使う。 私なら残り2~3枚になったところで20枚パックを買い足すけれど、彼らは最後の1枚がなくなるまで、補充するという発想がない。結局、夜中にドン・キホーテまでタクシーを飛ばすようなことをしているのだ。つまり、目的合理的に「こうなったら、ああなる」と予測して行動することができないのである。
下流が太る原因のもうひとつは、知識の欠如だ。
たとえば食品パッケージの裏に印刷してある成分表やカロリー表示を読んだことのある人は少ないのではないか。たとえ下流といえども、「こういうものは体に悪い」という認識があれば、食べるのを控えるかもしれない。しかしそれを阻むのがテレビだ。彼らは民放テレビをよく見ているが、テレビ局にとって食品会社は大事なスポンサーのひとつだから、あまり都合の悪い情報は流さない。その代わり、食欲を刺激するようなコマーシャルを四六時ちゅう流している。