できる先輩の話を録音して丸暗記
800件の電話を1日でかけ終える、というのは普通にやっていては達成できない仕事でした。休み時間を削る。獲得したお客様への資料の発送作業は電話をかけながらやる。日報はプルル、プルルという呼び出し音が鳴っているうちにちょっとずつ書く。そういう工夫をしないとダメで、単にかけているだけでは600件くらいが限界でした。確率の問題なので、いかに数をかけるかが勝負。そのためにいろんなことを効率化しました。
もともと、人の話を聞くのは好きだったんですが、話すのは苦手でした。営業をするようになってからは、通常業務が終わってから深夜まで、成績のいい先輩の話を録音したものを聞いて、すべて文字起こしして、丸暗記したり……。電話営業だけでなく直接訪問をするようになってからは、遠いところは土日にまとめて行って、平日に電話をかける時間を捻出していました。当時は本当に月次の目標を達成したかったので。
でも、グループリーダーになってからマネジメントの壁にぶつかったんです。10歳以上年上で、性別も違う人たちを数十人見るんですが、なかなか動いてもらえなくて試行錯誤しましたね。このときの体験が組織開発やマネジメントに興味を持つきっかけになっています。
最終的に年収は、月40万円+達成金で600万円くらいになりました。20歳くらいのときのことです。ものすごい高給というわけではないですけど、1人で暮らす分には充分すぎるくらいの金額ですよね。
ただ、金銭的に自立できるようになっても、やっぱりやりたいことがなんにもないんです。すると結局また「なんのために」って感じるようになるんですよね。
その会社ではグループリーダーになると、自分より上にいるのは役員の人たちだけだったので、役員との会議や飲みの機会も増えました。勉強になることも多かったけど、少しずつ「ずっとはいられないな」と思い始めました。
その頃はあまり世間ずれしていなかったので、どの会社にも理念がちゃんとあって、経営層の人たちはそのためにがんばっているんだと思っていました。でも、実際に彼らの近くにいると、アルバイト情報誌に書いてあったような理念は飾りのようなもので、構造的には下の人たちが稼いだお金を使って上の人が遊んでいる印象で。とにかく儲ければいいという話で、事業に対してモラルがない感じがしてしまって。もともとの期待とのギャップが大きくて、これ以上は続けられないなぁ、と感じてしまったんですね。
それまではお給料が上がるのが楽しかったわけですけれど、お金の部分でそれなりに満足してしまったので、何かそれにプラスアルファがなければさらに頑張って次のステージの年収1000万円を目指そう、ってどうしても思えなかったんです。