いつ、どこで、どのように情報を提供するか

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ウェザーニューズの業績推移

同じく花火大会や野外ライブなど多くの人が集まる催し物の開催の判断においても、天候は重大問題だ。ところが気象庁が通常予報を発表するのは、5時・11時・17時の3回。イベント主催者にとっての開催可否判断をする適切なタイミングでの最新予報は、気象庁のホームページや177番では手に入らない。また知りたいのは、その催し物の場所で雨が降るかどうかなのだが、このピンポイントの情報も入手できない。小売企業やイベント管理者だけではない。ほかにも、ダム管理者、建設会社、農家等々、ピンポイントでタイムリーな気象情報を必要としている事業者は多い。

今では誰もが入手できる気象情報。これを使ってウェザーニューズは、収益性の高い事業を拡大し続けている。その鍵として、以下のポイントが指摘できる。

(1)組み合わせる

休日の外出を楽しんでいる人たちが知りたいのは、市町村単位での「降水確率」ではない。知りたいのは、今自分がいる場所で雨にあうどうかである。しかしこれを知ろうとすれば、降水確率だけではなく雨雲の発達度合いを左右する気温や湿度などの情報、さらにその人がどこにいるのかを知るための携帯電話のGPS情報が必要となる。あるいは、フライトを前にした航空機へ着陸可否を示すには、気象情報に加えて、機体の性能やパイロットの技量などを把握しておく必要がある。ウェザーニューズは、こうした複数の気象情報、あるいは気象以外の情報との組み合わせによって、気象情報の価値を引き出してきた。

(2)メッシュを細かくする

天気予報はフリーだ。とはいえ、それは気象庁の予報区ごとの粗いメッシュの予報である。発表されるのも平時は6~12時間の間隔。イベント主催者としては、もっとピンポイントでリアルタイムの情報を入手したい。ウェザーニューズは、こうした事業者や個人の存在を見逃さず、きめ細かい予報を提供してきた。

(3)コンテクストを踏まえる

ウェザーニューズは、情報を組み合わせたり、メッシュの細かい対応をしたりすれば、偏在する情報であっても商品となることを知っている。状況の特殊事情に合わせた作り替えが、価値を生むのである(井上達彦『模倣の経営学』日経BP社、P.57~59)。

もう一つ見逃さないようにしたいのは、同社の取り組みの起点が、常に顧客の現場にあることである。気象情報によって、貨物船が半日早く港に着けば、一隻で数十万円から数百万円の節約になる。あるいは、農家が刈り取った小麦が雨に当たることを避けられれば、一つの町で数億円の節約になる。同じ気象情報であっても、誰に、いつ、どこで、どのように提供するかで、生じる価値は大きく異なる。

だからウェザーニューズは、新サービスの開発にあたって、まずは誰に(どの領域の事業者や生活者に)気象情報を提供すれば大きな価値が生じそうかを探索する。その判定基準は、顧客の困り具合の大きさ、そして市場を拡大させる展開性の高さだという。これは高収益ビジネス構築の基軸(高杉康成『[実践]超高収益商品開発ガイド』日本経済新聞出版社、P.23~28)にかなう基準である。そのうえでウェザーニューズの開発担当者たちは、いつ、どこで、どのように情報を提供するかを見定めるべく、見込み顧客の現場に日参し、そこでの作業手順や、個々の意思決定の切迫感などの理解につとめる。あるいは航空気象サービスへの参入にあたっては、航空会社の運航管理業務の経験者を中途採用したりもしてきたという。

万人の頭上に広がる空。この空を見上げて駆け上がってきた事業を、着眼点のよい取り組みが支えていた。

(平良 徹=図版作成)
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