では、“Could you send it by Friday, please?”ではどうでしょうか。この場合、相手はイエス・ノーの両方の選択肢が与えられており、やはり丁寧な依頼文と言えます。ところが、きちんと意識する人はあまりいませんが、この依頼者には「相手にほぼ100%イエスと言ってもらえる」という心理が隠されています。おそらく読み手がネーティブならそう感じる人も多いはずです。もし相手の立場が自分よりかなり上の場合や、依頼の仕事内容が難しい場合、日本人が学校で丁寧な表現として学んだCould you――でさえ相手の気分を害するリスクはゼロではありません。

どうすればいいかと言えば、相手にノーと断る余地を与える表現に工夫するべきなのです。例えば、“I wonder if I could ask you to send it by Friday.”や、“I would be really grateful if you could send it by Friday.” これらは相手に十分敬意を払った言い方と言えます。

仕事を発注するときに、そんなへりくだった表現では相手先からナメられてしまうと心配する向きもいるでしょうが、ビジネス英文では、日本人が思っている以上に丁寧な表現を心がける傾向があることを知ってください。謙虚さや敬意、思いやりを込めたメールを書けるかどうかで、書き手の手腕を占うようなところがあるのです。

相手を思い通りに動かす書き方とは

ある程度強く指示・命令をするときは、より強い意味の単語を選択するのではなく、できるだけ、丁寧かつやさしい表現にしたうえで、そうしてほしい「理由」を添えることで相手に適度な“プレッシャー”をかけることができます。日本のビジネスパーソンはこの理由を付けることを失念するか軽視することが多いように思います。丁寧さとプレッシャーを両立させる英文メールこそが人を自在に動かすのです。

日本人の英文メールに感じる違和感はほかにもあります。それは、日本語のメールの冒頭でしばしば使うフレーズ「いつもお世話になっています」をそのまま英文化し、“Thank you always for your continuous cooperation.”などと書くケース。メールを受け取る相手が言葉に敏感なネーティブである場合、不快に思う危険性があります。なぜなら常にcooperation(協力)するのは相手であり、上下関係をより強調する形になるからです。

このように「力関係」に配慮した表現をすることが、相手を動かす英文メールの重要ポイントなのです。