外国人の取引相手に苦心して英文メールを書いたのに、意図を理解してもらえなかったり、返事ももらえず無視された経験はないだろうか。ネーティブにも必ず“伝わる”書き方のコツを、ビジネスライティングのプロに伝授してもらった。

なぜ相手にメールを無視されるのか

ビジネスにおける英文メールの必要性・重要性はますます高まっています。

ピー・ビー・ライティングセンター代表取締役 ポール・ビソネット 
カナダ・モントリオール生まれ。1975年の来日以来、200社以上の大手企業でビジネスライティングを指導するとともに、東京外国語大学で講師を務める。現在は、ビジネスライティングに関する各種セミナーを行っている。主著に『相手を「必ず動かす」英文メールの書き方』。

私は38年間、日本の大企業数百社、約2万人のビジネスパーソンの英文ライティングを指導してきました。彼らが抱く悩みのひとつが、英文メールで仕事の依頼をしたのに相手が動いてくれない、下手をするとメールを無視されることさえあるということです。

なぜでしょうか。原因のひとつに、メールの依頼内容が曖昧であることがあげられます。これは、起承転結という結論を最後に述べる日本語の文章スタイルをそのまま英文にも適用したことで、簡潔なメールを好むネーティブは「結局何が言いたいのか(求められているのか)わからない」と判断した可能性があります。不思議なことに私が指導した日本人の9割は英文メールを「結論から書いているつもりだ」と言いますが、読み手からすると、まだまだ日本人のそれはまどろっこしいのかもしれません。

そして私が今回、より強調したいのは、日本人の英文メールには丁寧さがいささか不足しているという点です。そう言うと、「私はお願いごとをするとき必ずpleaseと書いている」と反論する人は多いです。

しかし現実問題、それだけではメールを受け取った相手が失礼だと感じてしまう場合があります。pleaseと下手に出たつもりが、かえって相手を憤慨させることがあるのです。またpleaseと書けばすなわち丁寧表現になるというのは大きな誤解です。

難しい仕事はどう頼めばいいか

例えば、“Please send it by Friday.”は礼儀正しい命令文と言えますが、書き手と読み手の関係(読み手が指示に従う)を考えると、書き手は読み手を自分より下と位置付けていることになります。

自分が相手より力関係が明らかに上である場合(例:上司と部下、顧客と販売業者、など)は前出の表現でも問題ないかもしれませんが、持ちつ持たれつの平等な関係の場合、相手に前向きに協力してもらうためにもう少し単語の選び方に配慮が必要でしょう。