日本の管理職の年収は頭打ちに

このように海外の企業では、課長級以降、役職が上がるに従って賃金カーブは急上昇するのが一般的だ。

しかし、日本企業の場合、戦後長らく終身雇用と年功序列を前提とした給与システムだったために、賃金カーブは緩やかに設定された。高い報酬で優秀な人材を外部から引っ張ってくるよりも、新卒で一括採用して10年、20年かけて一人前にしていく育成スタイルだから、職能や職級に合わせて、徐々にではあるが、右肩上がりに給料が上がっていく仕組みだった。

大量生産、大量消費の時代はそれでよかったのだが、成長が頭打ちになると終身雇用、年功序列を前提とした右肩上がりの給与システムが持たないことに気付いて、今から20年ほど前に日本の企業社会でも能力主義や成果主義を導入する動きが強まった。

結果、それまでは55歳前後だった賃金カーブのピークは42歳ぐらいにまで下がってきた。42~43歳以降も給料が上がる社員もいれば、上がらない社員もいるという状況になってきたのだ。

とはいえ、今から30年前に大量採用した世代が日本企業にはごっそり残っている。42歳のピークを過ぎたからといって、極端に給料を下げられない。かといって部長や本部長といった役職は与えても、その世代の人数が多いので給料を高くするわけにもいかない。ということで日本の管理職の年収は頭打ちになっているのである。人間を絞れば残った人に対してはかなりの給料をはずむことはできるが、絞れないために日本の部長以上の給料がアジアにも劣るようになったのだ。

カルロス・ゴーンやハワード・ストリンガーのような外国人経営者がやってきて、それまでの日本企業では考えられないようなバカ高い報酬を自らに与えて、さすがに一人でもらうのは恥ずかしいということで一部役員の報酬も引き上げた。

それをもって日本の管理職の給与水準もグローバルレベルに近づいたというのはまやかしに過ぎない。日本の企業の管理職の多くは、仕事的にもポジション的にも相当ヘビーなものを背負わされながら、頭打ちの給与体系の中に押し込められているのだ。

管理職一個人の年収ではなく、その企業の管理職全体の年収総額はいくらかというデータを取れば、管理職が多い日本企業の数字は大きくなるだろう。

そこが日本企業の悩みのタネで、この問題に手を付けられるトップにはお目にかかったことがない。