子供の将来のために何をすることが必要か
うちの子はもしかして……、と思ったら、公立の小学校であれば担任か、特別支援教育コーディネーターという先生がいるはずなので、まずはその方々に、子供がどこで困っているかを相談してみてください。
私立の小学校では特別支援教育の専門家がいないこともあるので、私学の協会や自治体の教育委員会、教育センター、特別支援学校に相談されてもよいでしょう。
日本の教育では、できなければ「繰り返しゆっくり丁寧に」やらせますが、この通り何度も繰り返しやることでできる子がいる半面、何度繰り返してもできない子がいます。親は「うちの子は○○だから仕方がない」と決めつけたりせずに、特性に応じた訓練方法を発見してあげてください。
大事なことは、子供が社会に適応するために何が必要かという視点を持つことと、それに合わせて学び方、教え方を変えること。絵本に登場するマックスの学校の先生のように、まずできるところを伸ばして自信をつけさせる、ということも重要だと思います。教育には、大人側のさまざまな視点や発想が要求されることを忘れないでほしいですね。
13年6月「障害者差別解消法」が成立し、16年からは学習障害のある子供には、テスト時間を延長するなどの“合理的配慮”がなされるようになります。
これまで日本では発達障害の子がなかなか理解されなかった歴史がありますが、今後はマックスのように計算が苦手でも、未知の才能が見いだされ、適切な指導を受けられる、そんな子が1人でも増えることを願ってやみません。
※文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(2012年12月5日)より。
全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、通常学級に在籍する児童生徒のうち、標本児童生徒数5万3882人で調査。学習面調査は「LDI-R-LD診断のための調査票」(日本文化科学社)を参考に作成。「計算する」とは計算スキルを使って量的課題を解く力。「推論する」とは、図形や数量の理解・処理といった数学的思考を含んだ、問題解決に向かって思考する力を指す。
『算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし』(バーバラ・エシャム:文、マイク&カール・ゴードン:絵)の翻訳者であり、国内外の教育現場、特別支援教育、非行などの問題を取材する教育ジャーナリスト。北海道大学大学院教育学研究員付属子ども発達臨床研究センター学外研究員。元内閣教育再生会議委員。著書に読み書き障害を扱った「怠けてなんかない」シリーズほか多数。