一方で、企業は赤字と黒字を繰り返すものであり、繰越欠損金を何年にもわたって控除していくと、なかなか課税所得がプラスになる(税金がかかる)タイミングがこないという現実もある。
経済が右肩上がりに成長している時期ならいいが、景気のアップ・ダウンのサイクルが短いとなおのこと、課税の機会が訪れない。長引く不況で繰越欠損金が積み上がり、それが法人税の税収が増えない原因にもなっているのだ。
2011年度に繰り越された欠損金は76兆円といわれる。このうち9.7兆円が繰越欠損金として単年度の黒字額43.6兆円から控除され、課税対象になったのは33.9兆円だったという。もし9.7兆円の繰越欠損金に実効税率30%で課税ができれば、法人税は「9.7兆円×30%」で2.9兆円もアップした計算だ。
右肩上がりの経済成長が望みにくいとすれば、法人税収の増加は期待できず、だからこそ消費税で税収を確保しようという動きが出てきたのだろう。
消費税と法人税の大きな違いは、法人税が利益に対して課すものなのに対して、消費税は赤字の企業であっても納税義務があるという点である。交渉力の弱い中小企業などが消費税の増税分を価格に転嫁できない場合、赤字でも消費税は納めなければならず、それが原因で倒産に追い込まれる恐れも出てくる。
前述のとおり、繰越欠損金の制度には合理性があるが、法人税については一部の黒字企業がその大部分を負担しているという現状も知っておきたい。税率だけでなく、課税ベースの問題についても、議論していく必要があるような気がする。