しかし武庫川女子大学は当時、学生増の中でも、他大学に先駆けた担任制の導入、全員参加の体育祭や合宿研修、今では当たり前の1年生のゼミ、出席を重視した厳しい授業管理、学生の声を反映した教育の改善など、学生増加にあぐらをかく他大学とは正反対の、教育重視の視点を強く打ち出したのである。「学生が増えて、ようけ授業料をいただけるんですから、教育に還元するのは当然だと思いました」と今安達也副学長は振り返る。
当時、学生アンケートで意見を聞いて教育を改善する試みは、教員からの猛反発を招いた。だが、クラス担任制や行事などで帰属意識を高め、仲間や教員との絆を深めた卒業生は、社会で活躍し、高い評価を得ている。武庫川女子大の幸せ度が高いのは、卒業生の大学への感謝の思いの強さでもある。
00年代、10年代になると武庫川女子の順位は落ちてくるが、今安氏は「よそ(他大)がやり始めたからや」と冷静に分析している。90年代はマスプロ教育オンリーだった関関同立など関西の名門大が、こぞって教育水準の向上に努め始めた今は、武庫川女子大には試練の時かもしれない。「ウチは今後もずっと女子大でやっていきます。男性有利な社会の中で、手に職を付ける実学を売りにした女子大としてのニーズがある。これからも、学生のニーズに応えるカリキュラムを編成し、教育指導にも力を入れたい」。