1回目のセミナーがコンサルティングのプレゼンテーションの場だ。そう考えると、納得できる人も多いのではないか。個別企業の具体策として、3~5年後のビフォー・アフターのイメージを口頭である程度お伝えする。まさに無料でコンサルティングを行っているのだ。
それを聞いて、私にコンサルティングを頼むか、頼まないか決めてもらう。
また紹介で仕事を請けることも多かった。紹介はほとんど既存のお客様からだ。その場合は、ほとんど発注することを決められているから、基本的な相性の確認をするだけで、仕事を引き受けていた。
コンサルティングを頼むというのは、お金を出してその人を雇うということだ。年間の費用からすると、社員を1人採用する人件費と同じくらいの金額がかかる。
採用の面接で、企画書を提出してもらうだろうか。
履歴書はそれに当たるのかもしれないが、それに将来の提案まで書いてあるわけではない。
1回目のアポイントは、五十棲剛史という人間の面接をしてもらうというつもりでいる。
そこで、この人に期待できるという可能性を感じてもらえれば、発注してもらえる。そうでなければ、縁がなかったということ。企画書がそこで必要だったことはない。
正直に言ってしまうと、無料で詳細な企画書はつくりたくない。
私の時間は、すでにコンサルティングフィーをいただいている方に、できるだけ使いたい。だから無料でのコンサルティングはセミナーの1回で済ませたい。いや済まさなければ、すでに契約してくださっているお客様に失礼だと思っていた。
だからこそ企画書をつくらなくてもいい受注方法を、自分なりに確立していった。
これを万人に勧めようとは思わない。顧客によっては企画書が必要なところもあるだろうし、企画書があることでよりわかりやすく伝えられる人は、つくったほうがいい。しかし、私はそうではない。
普通はこうは考えないのだろうか。
苦手でも、やりたくなくても、周りがそうしていたら、同じことをするのだろうか。
そうなのだとしたら、私はそういう集団からは浮いているだろう。いや、浮いて結構。
嫌なこと、必要ないことは、やりたくないのだ。
※本連載は『おれが浮いてるわけがない。』(五十棲剛史 著)からの抜粋です。