――世界の変化のとらえ方、ビジネスチャンスのみつけ方、あるいは人材の育て方などをうかがってきましたが、最後にいまの時代の経営者としての必須条件をお尋ねします。第一に必要な条件は、「スピード」ですか、チャンスをみきわめてから動く「溜め」でしょうか。

【宮内】やはり、スピードでしょう。一般に、日本企業にはスピードがなさすぎます。溜めも大事ですが、溜めを強調すると、いいことでも言うだけで、実行しなくなってしまう危険があります。

ゴルフでも野球でも、クラブやバットのヘッドのスピードがすごく速くなくては、ボールは遠くに飛びません。もちろん溜めも有効ですが、速いスイングができない人が溜めても、結果は出ません。企業でも、速く動ける会社でないと、大きな成果を生むことはできないと思います。スピードを出すために、ゴルファーや野球選手は、ものすごくトレーニングを重ねています。ビジネスパーソンも、ものすごく勉強する必要があります。企業文化としては、情報を共有化する職場にすることが大事です。それと、部下たちをその気にさせる上司の説得力も、必要でしょう。

オリックス会長 宮内義彦
1935年、兵庫県生まれ。58年関西学院大学商学部卒業。60年ワシントン大学でMBA取得、日綿実業(現・双日)入社。64年オリエント・リース(現・オリックス)入社。70年同社取締役、80年代表取締役社長・グループCEO、2000年代表取締役会長。03年より取締役兼代表執行役会長。著書に『経営論』(日経ビジネス人文庫)、近著に『世界は動く』(PHP研究所)がある。
(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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