前回とは状況が異なる面もある。08年以降、政府は経済対策として「家電エコポイント」「エコカー補助金」などの消費喚起策を行った。これで需要が先食いされたため、税率引き上げを前にしても、家電や自動車の駆け込みはそれほど起きない可能性がある。
97年当時とは、可処分所得の推移も異なる。当時は所得が上昇していたが、いまは下落傾向にある。いくら買いだめしておきたくても、お金がなければ前倒しして買い物することは難しい。これも駆け込みを抑制する要因になる。
このように、今回は駆け込みとその反動を和らげる要因が多い。
そもそも長い目で見れば、消費税率引き上げは物価のトレンドにほとんど影響を与えない。図の6つの品目の消費者物価指数を見てみよう。いずれの品目も97年4月の税率引き上げ時に価格が上がっているが、興味深いのは、その後のトレンドだ。もともと横ばいで推移していた自動車や外食は、税率引き上げ後もほぼ横ばい。一方、もともと下落傾向にあった冷蔵庫、エアコン、テレビなどの家電は、いったん税率引き上げで高くなった後、ふたたび下落に転じている。つまり税率引き上げが物価に与える影響は一時的にすぎず、結局はそれまでのトレンドに収斂していく可能性が高いことを97年の経験は示している。
消費税率がどうであろうと、時代とともに価格が高くなるものは高くなるし、安くなるものは安くなる。そう考えると、消費税率を気にして買い物をする必要はないと思うが、いかがだろうか。