日本人が生き残るために必要な商品

今の日本のティーンエージャーの多くは公務員になるのが夢だそうですね。でも普通、この年代の子供は、フットボール選手や俳優になりたいなどというのではないですか?

お金持ちになりたいとか成功したいという野心もなく、17歳やそこらの若者が政府で働きたいとは一体どういうことでしょうか。かつて日本はソニーやトヨタ、パナソニックなど素晴らしい企業を生み、イノベーションを起こしました。起業家は憧れの的で、若い人もそんな企業で働きたがった。でも今の若者はみな政府で働きたいという。そんな国に明るい未来はないでしょう。だって当の政府は日本を救おうとはせず、債務を膨らませているだけなのですから。

おそらく近い将来、日本は大変なことになるでしょう。子供はいない、労働力もない、債務はどんどん膨らむ、そして通貨の価値が下がり国力は落ちる。私の大好きな美しい日本の女性たちだってみな年を取ってしまうんです。

そんな中で日本人が生き残るには、やはり通貨にかわる実物資産を買っておくのがいいと思います。私は、米、砂糖などの農産物、そして銀やニッケルなどの金属に注目しています。下落基調の金についてももう少し下がったら買い増すことを考えています。

アメリカの経済についても、日本と同じく中央銀行がお金を刷ることで回復したように見せかけているだけですから一時的なものでしょう。人工的にマネーを市場にあふれさせたために米国株も上がったのです。私はアメリカの将来についてはおおむね悲観的ですが、この国が消滅するといっているのではない。経済規模は今より小さくなるかもしれませんが、日本と同じく農業といった特定の分野についてはまだポテンシャルがあると考えています。

北米に投資したいなら、私はアメリカよりカナダを勧めます。米国のような巨額の債務を抱えておらず、資源も豊富な国です。たくさんのアジア人が移民しているバンクーバーは将来的に現在のニューヨークのような場所になるのではと想像できます。私たちも移住を考えたことがあるんですよ。

一方、中国は大気汚染や伝染病の流行など非常に深刻な環境問題を抱えていますが、彼らは正しい方向を知っています。きっと環境浄化のために設備投資をするなどして解決に向かうはず。日本の技術をうまく輸出すれば大きなビジネスになりますよ。今後、中国経済が行き詰まることは何度もあるでしょうが、それは成長する際にどの国も経験すること。やはり米国に代わる21世紀の超大国は中国なのです。

ジム・ロジャーズ
1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学卒、英国オックスフォード大学ベリオールカレッジ修了。ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンドを設立、10年間で4200%というリターンを実現。その後、バイクと車で2度の世界一周を果たす。2007年、米国からシンガポールに移住。著書も多数あり、最新刊は『ストリート・スマート』。
(プレジデント編集部 木下明子=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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