真横の席は、心理的な距離が1番近づくポジショニングです。仲の良い恋人同士を見ていればおわかりでしょう。しかし、距離が近づくからといって、突然お客様の横に座るのは不自然です。また、急に体が近づいて、相手のパーソナル・スペースを侵してしまうと、警戒心が先立ち不快に感じる人もいます。そのため、最初からその位置に座るのは避け、資料を使うタイミングなどに「お隣に座ってもよろしいでしょうか」とひと声かけてから横に座るといいでしょう。資料は同じ方向から見たほうが説明しやすいという点でも、メリットがあります。
上司に対しても基本は同じ。自分の提案を通したい場合などは、斜め前の席で話をしたほうが、事がスムーズに運びます。ただし、女性の秘書が社外で上司と行動する場合だけは別です。この場合は、上司との心理的な距離感よりも、「第三者から自分たちがどう見えるか」という第三者の視点を優先します。秘書とはいっても、常に大きな名札を下げているわけではありません。他人から見れば「女性である」ということしかわからないので、あらぬ誤解が生じることもあるでしょう。レストランや乗り物の中では、できる限り隣の席は避けること。上司のためにも、自分のためにも、誤解を生まない努力が必要なのです。
日本一のプロ秘書が教える「一流のおシゴト」
お客様の正面は上司。自分はその横に座る
中村由美
コンサルタント会社の社長秘書を経た後、当時まだ100店舗の中堅企業だった株式会社壱番屋に入社。秘書の経験を買われ、社長秘書に任命される。急成長の壱番屋において創業者・宗次徳二氏をはじめ、3代の社長に仕え、トップの側で上場も経験する。中小企業の秘書実務と上場企業の秘書実務の両方を知る数少ない人物。日本秘書協会(元)理事、ベスト・セクレタリー、日本秘書クラブ東海支部(元)役員、秘書技能指導者認定、サービス接遇指導者認定。