構造不況直面の鉄鋼は長期低落へ

ところが同じ部品でも自動車向けの鋼材を供給している鉄鋼業界は相次いで昨年を下回った。自動車と並んで春闘の牽引役の鉄鋼大手のボーナスの200万超えは珍しくなかった。リーマン・ショック前は新日鉄住金、JFEスチール、神戸製鋼所の大手は自動車をしのぐ勢いだったが、その後の市況の低迷で長期低落傾向に入った。神戸製鋼所の年間ボーナスは前期比13.59%マイナスの89万円で、100万円の大台を割った。

鉄鋼不振の最大の原因は中国企業を中心とする生産過剰による鋼材価格の下落だ。中国市場で溢れた鋼材が世界に流出し、世界の鉄鋼業界は構造不況に直面している。神戸製鋼所の鉄鋼部門は2013年3月期に502億円の経常赤字を計上し、すでに一部の高炉を休止するなどの検討に入っている。

製紙業界も業績不振で軒並み下がっている。国内のパルプ生産量は12年まで4年連続で1000万トンを割り込み、ペーパーレス化もあって国内消費量も低迷の一途をたどっている。このままジリ貧状態が続くようであれば、業界再編も起きかねない情勢だ。

そして、経営の立て直しでボーナスどころではないのが電機業界だ。13年3月期決算で7650億円の赤字を計上したパナソニックはボーナスの2割カットを組合側に提案している。シャープも業績不振で人件費のカットが迫られる中、夏のボーナスは1カ月分の支給で合意した。1カ月分は約31万円。一律2万円の給与カットに加えてこの金額では生活水準の低下は免れない。

また、ボーナスでは常に電機のトップに君臨していたソニーの凋落にも歯止めがかからない。業績不振とはいえ、11年は電機トップの約200万円をキープ。だが、12年は155万2000円と大幅に低下し、今期は140万円台。三菱電機と並ぶ水準にまで下がり、高収入、高ボーナスと謳われたソニー神話は完全に崩壊した。

電機業界で唯一好調さを維持しているのが、コスト管理とインフラビジネスへの集約が功を奏した日立製作所だ。前期比1.46%増の5.35カ月、金額で160万3930円。1991年以来の高水準だが、社員は手放しで喜んでいるわけではない。同社の部長職の社員は「リーマン・ショック後の業績不振でボーナス1カ月分ももらえない年もあったし、厳しい生活を強いられてきた。もっともらってもいいと思うが、コスト管理は今も続いており、業績が伸びても給与も含めてボーナスも上がることはないだろう」と語る。