会社を超えてグループ企業内を異動させるのも特色の1つ。グループの人事部長の定例会が毎月あり、A社に優秀な課長がいれば、話し合いで別の会社に異動させることも頻繁に実施している。「9ブロック」は課長、部長の各層ごとに作成されるが、大政氏は部長以上の各法人のトップを含めた評価を担当していた。社長と話し合ってリストを作成し、本国の人事部門長と社長の承認を受けることになる。1度、リーダーとして疑問符がつく人物をリストに掲載してアメリカに送ったところ、突き返された経験もある。
「驚きました。信販会社のリーダーにちょっと問題があったのですが、後継者もいないことから甘い評価をつけたのです。すると、アメリカから『間違っている。彼は問題があるだろう』とはっきり言われた。じつは本国の人事は年に2回必ず日本に来て、いろんな人にインタビューをしています。ですからすべてお見通しなのです。制度をつくったら終わりではなく、運用の細部に至るまで徹底しているところがGEのすごいところです」(大政氏)
徹底ぶりは通常の人事評価も同じだ。人事評価も期初の目標の達成度合いを示す業績を縦軸、GEバリューと呼ぶ行動規範の実践度を横軸にしたマトリックスで評価する。業績も高く実践度も高い社員はA評価となり、高い報酬が得られ、昇進も有利になる。業績は高いが実践度が低い人がB評価、実践度は高いが、業績が低い人はC評価になるが、「ジャック・ウェルチはかなり数字にうるさい人でしたが、GEバリューは最も大事であり、BよりもCを高く評価すると言っていた」(大政氏)。
問題は業績も実践度も低いD評価の社員。「2・6・2の法則ではありませんが、D評価は2割ぐらいいるはずだから基本的に辞めさせなさい、と本国から言ってくるわけです。でも2割もいないと本国とやり合って、私の時代は1割ということにしました。しかし、1割をいきなり辞めさせるのではなく、お互いに話し合って課題を設定し、半年間猶予を与えるPIP(業績改善計画)を実施します。半年経った後に、ダメだということであれば辞めていただくことになります」(大政氏)。
人事評価結果は前述したセッションCに反映され、最終的にグローバル規模の人材データベースに登録される。そして配置だけではなく、受けるべきトレーニングに活用される。様々なトレーニングが用意されているが、選抜人材のみを対象にするのが「ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所」(クロトンビル)での研修だ。