もちろん、選抜人事だけではない。普通の社員もキャリアアップのチャンスが与えられている。

「GEの場合は当然、担当は決めますが、日本企業のように1つの仕事を極めることはなく、ローテーションでいろんな経験をさせます。仕事ぶりを見て、この人を将来どういう方向に持っていこうかと真剣に考えることが上司としての役割だと教えられています。GEはビジネスの領域が広いので、たとえば100~200人単位のビジネス部門に人事を含めた管理全般を担当するミニ人事部長のようなポジションを与えて成長させるようにしています」(大政氏)

一方、GEでは高い評価を受けた社員を褒め称える「褒賞と認知」を重視する。社員を鼓舞し、モチベーションを高める仕組みの1つに前述したクロトンビルでの研修も入るが、もう1つは「ピナクル(頂点)」と呼ぶ成績優秀者だけを招待する豪華なイベントだ。伊藤氏は約2週間のカリブ海クルーズに招待された。

「世界の優秀社員を毎年200人、夫婦同伴で招待され、2週間、豪華客船の旅をしました。旅行業者任せではなく、手作りの演出がすごいのです。アメリカの有名なアーティストが船に乗り込んでくるなど、毎日がサプライズの連続です。毎晩パーティが開かれ、部屋に帰ると、ギフトが置いてある。どうしてそこまでお金をかけるのだろうというぐらい徹底していました」

褒め称えることの重要性はGEバリューの中にもある。豪華イベント以外でも「A評価を得た優秀な社員に対しては、たとえば豪華なランチやディナーに招待することを人事評価のコーチングフィードバックのやり方の中にも書いてある」(伊藤氏)ように、ある意味で計算されたモチベート手法が世界の人事部にまで徹底されている。