2013年、「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」(ラボ)がデジタルサイネージアワード2013で、シルバー賞、ブロンズ賞を受賞。

【田原】未来の肯定はわかる。未来の否定ってどういうこと?

【猪子】例をあげると、コピーライト(著作権)ビジネスがそうでしょ。20世紀までは音楽も出版もソフトウェア、あらゆる業界がコピーライトをパッケージ(複数のものを1つにすること)化してビジネスにしてきた。でも、情報化社会になった瞬間、コピーライトパッケージはビジネスにならなくなった。それを受けて、シリコンバレーの人たちは、「いままでのモデルがビジネスにならなくなるなら、次はどういうものがいいのか」と未来を肯定して、You Tubeをつくったり、音楽はライブのビジネスに移ったりするわけです。ソフトウェア産業のアップルもGoogleもコピーライトをパッケージにして売ったりしてませんよね。

【田原】でも、日本は過去にこだわると。

【猪子】だからどうするかというと、コピーライトのパッケージ化はもはやビジネスにならないのに、無理にビジネスを成り立たせようとして法律を増やしていく。そして、法律を増やしてもビジネスが復活しないにもかかわらず、さらに増やしていく。これは未来の否定だよね。

【田原】これはどうしたらいいだろう。

【猪子】どうにもならない。日本はすでに老人の国だから。

【田原】といっても猪子さんは若いのだから、過去に縛りつけようとする鎖をぶった切っていかなきゃいけない。

【猪子】いや、切れない。切ろうとすると、警察につかまっちゃうもん(笑)。諸先輩方もそうだし、Winnyもそうだったでしょ。だから僕は、もう誰も興味がないような、シリコンバレー的にはメーンストリームではない、つまりレバレッジが利かない全く儲からない分野でこっそり楽しく生きていく(笑)。その中で未来へのヒントを出せて、いつか日本が気付いてくれれば本望です。