偶発的な動きをうまく取り込む
第2に、この校庭の芝生化の事例では、波状攻撃が実現している。そこでは、校庭の芝生のメンテナンスだけではなく、花壇の手入れ、中庭の芝生化、東側の荒れ地の開墾、各種の畑づくりといった、多様なアクションが展開している。学校も組織である以上、こうしたアクションの1つひとつの採択は、リーダーがその可否を判断することになる。重要なのは、これらの判断が、大きな2つのゴールを見失わずに行われていることである。こうした方向付け(ディレクション)から、相乗効果や集積効果が生まれる。
第3に、この校庭の芝生化の事例では、ソーシャルなダイナミクスが実現している。藤原氏は、当初から一定の見通しをもって変化に挑んでいた。とはいえ、同氏もこの花壇の手入れ、畑づくりといった具体的なアクションのすべてを、当初から計画していたわけではない。人と人の関係では、何かが動くことによって、新たな事態が創発されることが少なくない。この事例でも、芝生の手入れを始めたことによって、それを見聞きした地域の人たちや生徒たちが、新たなかたちで加わってくるということが起きている。藤原氏が、さらにこうした偶発的ともいえる動きをうまく取り込んだことで、全体のゴールに向けた波状攻撃を実現している。
最後に、変化のエージェントとしての「つなげる」という行為の多面性を整理しておこう(図2)。そこには2つの軸がある。第1の軸は、プレーヤーとプレーヤーをいかにつなぐか。第2の軸は、アクションとアクションをいかにつなぐかである。
次に、つなげることで変化を引き起こすには、この2つの軸に沿って、2つの局面を乗り越えていく必要がある。第1の局面は、視点の転換。ここでは、変化をとどめている枠の外にいかに脱け出すかが課題となる。そして、この局面を乗り越えるには、先のプレーヤーとアクションの2つの軸に沿った展開がある。