では、民事ではどうか。気象庁の予報で損害を受けたのなら国家賠償請求訴訟を起こすことになるが、鈴木弁護士は、「国賠訴訟は現実的ではない」という。
「気象予報ではスーパーコンピュータが重要な役割を果たします。日本のスパコンは世界トップクラスで、気象庁の予報精度も高い水準にある。それでもつねに完璧な予報を出すのは不可能。そのことを前提にすると、予報を外したからといって気象庁側の故意、過失の立証は困難であり、国家賠償請求をするのは難しい」
都知事が疑ったように、気象庁が責任回避を意識するあまり予報を外したのだとしたらどうだろうか。
「たしかに、気象予報士である私から見ても、積雪リスクを過大に評価した日があったように見えます。しかし、予報の精度が高まったとはいえ、コンピュータは数値を出すだけ。最終的には予報官が経験則に基づいて、『晴れ』『曇り』などの予報を出します。その判断には予報官の裁量が認められていて、注意喚起のためにリスクを強調した予報をするのも裁量のうちだと考えられます」(同)
一方、民間気象会社と個別契約を結んで情報提供を受けている場合は、損害賠償もありえない話ではない。
「報酬を払って予報を依頼したのに、相手が適切な手段で予報していなければ、債務不履行や不法行為で損害賠償が認められる可能性はあります。たとえば予報には高層天気図や気温、風などのデータが必要ですが、それらを用いずに予報していたとしたら適切とはいえません」(同)
富士山が噴火したら、その影響は大雪の比ではない。しかし、予報が外れても、法律上の責任を問うのは難しいようだ。