仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは成田悠輔『22世紀の資本主義』(文春新書)――。
賃金格差、賃金の比較
写真=iStock.com/AndreyPopov
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イントロダクション

キャッシュレス決済が普及し、日常生活における「お金」のイメージが紙幣や硬貨から、「数字」に置き換わっている人も多いかもしれない。

「お金を使う」という感覚は、おそらく20年ほど前から変化している。さらにその先、22世紀にはどうなっているだろうか? 「お金」は存在しているのだろうか?

独自の視点で政治や経済、社会について語り、常識や既存の価値観に挑戦する姿勢から「奇才」と呼ばれることも少なくない成田悠輔氏が著した本書では、この先数十年から100年かけて起きる経済、社会、世界の変容を大胆に思考する。

現在、加速する「データ資本主義」の行き着く先は、お金が消えてなくなる「測らない経済」になるという。そのときに経済活動を仲介するであろう「招き猫アルゴリズム」とはいかなるものなのか。

著者の成田氏はイェール大学助教授、半熟仮想(株)代表。ウェブビジネスから教育政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、多分野の学術誌・学会に研究を発表、多くの企業や自治体と共同事業を行っている。著書に『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書)などがある。

A.お金という(悪)夢
B.忙しい読者のための要約
C.はじめに開き直っておきたいこと
0.泥だんごの思い出
1.暴走 すべてが資本主義になる
2.抗争 市場が国家を食い尽くす
3.構想 やがてお金は消えて無くなる
おわりに 22世紀の○□主義へ

太古の経済活動は小さく近かった

太古を懐古しよう。経済活動は小さく近かった。活動や交換、贈与のほとんどが顔見知りばかりの小さな村落や街かどに閉じていた。そんな環境では経済活動のほとんどを記録したり記憶したりすることもできただろう。有名なのが数千年前の古代メソポタミアなどで使われていた粘土や石でできた台帳だ。台帳は共同体内で誰が誰に何をしたかを刻印するものだった。

そういう台帳による記録の仕組みがお金を生み落とした。メソポタミアの粘土でできた台帳には「この粘土板を持ち込んだものにはこれこれの量の麦・ワイン・銀を渡す」などと書かれ、為替手形のような痕跡が残されていることも多かったという。台帳が手形やお金に進化していったことを示唆する。

やがて経済が爆発する。他人を巻き込み組織や工場を作ったり、遠くまで出かけて物を売ったり買ったり、果ては海の向こうまで出かけて貿易したりするようになった。こうなると、すべてを手作業で台帳に記録するのは無理になる。