「ソーシャルメディア就活」肯定本と否定本
ところで、ここ1、2年の間、ソーシャルメディアを活用して就職活動を進めること(活用しないと就職活動が進められなくなりつつある状況)がメディア上で「ソー活」などと呼ばれることがあります。こうした、特に近年の動向について、就職対策本ではどの程度とりあげられているのでしょうか。今回対象とした20点のうち、ソーシャルメディアの活用に関して言及があったのは4点のみでした。
ただ、これに関しては意見が割れています。たとえば赤羽良剛さんの場合、「企業は情報ツールを使いこなせる情報感度の高い学生を求めている。これからの就活においては、『SNS強者』になることが成功することの前提条件だ」(『恋する★シュウカツ』104p)として、特にFacebookを活用した就職活動を推奨しています。より具体的には、自己アピールをする、自分の興味に合う会社を探す、「就活専用SNS」を活用する、といった用途での活用が紹介されています。
高瀬文人さんらの『1点差で勝ち抜く就活術』では、「就活はセルフ・ブランディングだ」とする主張を受けて、「中身のない自分を演出」するのではなく、「いまある自分をより認知してもらう」べく、「ブログ、twitter、Facebookなどのソーシャルメディアを活用」しようと述べられています(24-25p)。特にtwitterに関しては、その140字という制限を利用して、300字から400字程度を書くことになるエントリーシートの執筆訓練に使おうというアイデアが示されています。
一方で、常見陽平さんと園田雅江さんの『本当に使える就活・実践本』では、SNSへの書き込み・投稿をもとにしたトラブル(内定したA社ではなくB社が第一志望だという書き込みがA社人事に発見されて内定辞退になったという事例や、未成年なのに大学1年次(つまり未成年)のときの飲み会の写真を掲載する等の非常識な行為の書き込み・投稿が採用担当者に発見される危険性など)と、トラブルを避けるための方法が主な言及内容でした。田宮寛之さんも、「ソー活では学生側のインターネット上での活動が、企業からチェックされる可能性があるので注意しましょう」という戒めの立場から言及をしています(『親子で勝つ就活』115p)。
肯定が2点、否定が2点。ソーシャルメディアを就職活動に積極的に使うべきか否かについて、共通した答えはないということです。連載第5テーマ「仕事論」のなかで、「これが答えだ!」というメッセージを与えてくれる自己啓発書が多数出版されることは、書籍間の矛盾がますます増えていくことを意味すると述べましたが、これは就職対策本についてもいえるように思います。就職対策本についてはこうした矛盾を多々観察することができます。次週、その点について考えてみることにしましょう。