TOPIC-1 流行の基本パターンは2つ

1年間の連載のなかで、さまざまなテーマの自己啓発書を読んできました。自己啓発書ガイドを皮切りに、「心」の扱いかた、20・30・40代論、ピーター・ドラッカー、仕事の辛さへの対処法、セルフ・ブランディング、女性の生き方、手帳術、掃除・片づけ、スポーツ、就職活動とみてきました。連載を終えるにあたって、こうした各テーマに共通する傾向、いわば自己啓発書一般にみられる「法則」のようなものについて考えてみたいと思います。

今回はまず2点考えてみます。1つは、ある特定のテーマの自己啓発書や、ある特定のフレーズがいかにして流行るのか、つまり自己啓発書の「流行」について。もう1つは、こうした自己啓発書の流行と「社会との関係」についてです。後者についてはここまでの連載のなかで既に幾度か言及してきたことですが、改めて整理したいと思います。

では第1点目、「流行」についてですが、まずはその主要パターンを押さえておきましょう。連載第1テーマ(第4回「自己活性化をはじめた啓発書市場」http://president.jp/articles/-/7009)では、ある編集者が、ヒット作の「二匹目のドジョウ」が狙えると思う感覚を「太い」と表現していたことを紹介しました。このように、ヒット作に牽引されて、同種の書籍が続々と刊行されるというパターンが、自己啓発書の流行の基本パターンであると考えられます。

連載のなかから振り返っておくと、第3テーマ「年代本」では、千田琢哉『死ぬまで仕事に困らないために20代で出逢っておきたい100の言葉』、川北義則『「20代」でやっておきたいこと』などがそれにあたります。より端的なのは、第4テーマ「ドラッカー」でみた岩崎夏海さんの『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』、いわゆる『もしドラ』がそうだといえます。こうしたヒット作の後に、類書が陸続していったわけです。

ただ、これは当たり前といえば当たり前のことです。今回は、言われてみればやはり当たり前だということになるかもしれませんが、もう1つのパターンについて考えてみます。これは、新しい言葉や考え方が、それ以前の国内の自己啓発書における流行と関係なく、突如登場する場合によくみられる「海外からの影響」というパターンです。