※本稿は、ヨハン・ハリ著、福井昌子訳『奪われた集中力 もう一度“じっくり”考えるための方法』(作品社)の一部を抜粋・再編集したものです。
“マッキントッシュの生みの親”の息子が作った機能
エイザ・ラスキンのことを聞いたことはないかもしれないが、彼はあなたの人生に直接介入している。実際、彼はあなたが今日どう過ごすかに影響を与えることもある。エイザは、世界をよりよくしているという自信の絶頂にあったシリコンバレーのごく一部のエリートに囲まれて育った。
彼の父親は、スティーブ・ジョブズのためにアップルのマッキントッシュを発明したジェフ・ラスキンで、彼はユーザーの注意が神聖だという一つの基本原則を掲げてそれを構築した。テクノロジーの任務は、人びとを引き上げ、より高い目標を達成できるようにすることだとジェフは信じていた。彼は息子にこう教えた。
「テクノロジーは何のためにあるんだ? なぜテクノロジーを作るのか? ぼくらがテクノロジーを作るのは、ぼくらのもっとも人間的な部分を取り出して、広げるからだ。絵筆だ。チェロとはそういうものだ。言葉とはそういうものなんだ。これらがぼくらの一部を広げるテクノロジーなんだよ。テクノロジーは人間を超人にするものじゃない。ぼくらを特別な存在にするものなんだ」
エイザは早熟の若きプログラマーとなり、初めてユーザーインターフェイスについての講演を行なったのは10歳の時だった。20代前半の頃には、初期のインターネットブラウザのデザインに最前線で携わり、ファイアフォックスのクリエイティブリーダーを務めた。その一環として、彼はウェブの仕組みを明確に変えたものを設計した。
それは「無限スクロール」と呼ばれている。
スクロールすれば画面が無限に更新される
年配の読者なら、インターネットがいくつかのページに分かれていて、あるページの下部に到達すると、次のページに行くためにボタンをクリックするかどうか決める必要があったことを思い出すだろう。
それは積極的な選択だった。一瞬立ち止まって自問することができたからだ。自分はこれをもっと見たいんだろうか?と考えることができたのだ。エイザは、ユーザーがそう問いかけなくてもよくなるようなコードを開発した。
フェイスブックを開いた時のことを想像してほしい。フェイスブックは、更新された近況の塊を最後まで読めるようにダウンロードしてくれる。指で下へ下へとスクロールしていく――番下にたどり着くと、自動的に別の塊が読み込まれてもっとスクロールできるようになる。
その分の一番下にたどり着くと、次の塊が自動的にダウンロードされる。それが次から次へと延々と続くのだ。それが止まることは決してない。無限にスクロールしていくのだ。
エイザはその設計に誇りを持っていた。「最初は、本当にいい発明に見えたんだ」と彼は言った。自分がみんなの生活を楽にしていると信じていた。より早く、しかも効率よくアクセスできることは常に進歩だと教えられてきた。彼の発明は瞬く間にインターネット上に広まった。

