参政党の躍進は何を生むか。感染症医の岩田健太郎さんは「『政治に参加しない層』を選挙の土俵に引っ張り上げたことが参政党の最大の功績だが、支持者は今後いろいろ考えさせられることだろう」という――。

ファクト認識なしは政治家にあらず

今回の参議院議員選挙の結果を受けて、喜んだ人もがっかりした人もいるだろう。

私の中で、政党選択の基準にしていたのは「反ワクチンがいるか」と「選択的夫婦別姓に同意か否か」の2つであった。

実は、どちらも国政全体の中ではそれほど重要な問題ではない。国政全体においては財政だとか、防衛(あるいは軍事)だとか、医療・福祉だとかのほうが遥かに重要だ(外国人ウンチャラは相対的には些事さじで、あれをビッグイシューに祭り上げた政党は戦術的に巧みであった)。

しかし、上記両問題は、政治家の科学性や論理性、ファクト認識能力を吟味するには非常によいアジェンダである。そして私は、科学性や論理性、ファクト認識能力のない政治家は端的に職能を欠いていると思っている。10本の指がすべて親指のような不器用な人間(私が、そうだ)が外科医になってはいけないように、科学性を欠き、論理的思考ができず、ファクトを認識しない人は政治家になる資格はない。

参政・神谷代表とさや氏 参院選・資料
写真=共同通信社
東京選挙区で当選を決めたさや氏(左)と花を付ける参政党の神谷宗幣代表=2025年7月20日、東京都新宿区

政治無関心層を土俵に上げた参政党

「選択的夫婦別姓」問題は、大多数の政党、政治家がグダグダであり、この点で私はいたく失望していた。ただ、いろいろな政党に存在していた「反ワクチン」な候補者たちは大多数が落選していた(参政党は本選挙における「バグ」なので、例外とする)。

「反ワクチン」な政治家は右派にも左派にも存在するが、前述の理由で政治家の職能は欠いている。これで、多くの政党は「反ワクチンを候補者にあげるのは戦術的に悪手である」ことを学習したであろう。よいことだ。

そして今回の参政党の躍進の理由は複数あると思うが、YouTubeやTikTokのような動画「だけ」で情報を得ている、言い方は悪いがいわゆる「情報弱者」の欲望に上手に寄り添ったのが成功の最大の理由だろう。いわゆる「無党派層」かつ「選挙に行かない」人たちなわけだが、参政党の功績はこうした「政治に参加しない層」を選挙の土俵に引っ張り上げたことにある。

参政党に投票した、「選挙デビュー」を果たした人たちは、今後参政党の選挙後の「リアル」を知り、いろいろ考えさせられることであろう。そういう意味では、超長期的に見れば、参政党の日本に対する功績は、案外大きいものなのかもしれない。過剰評価もたいがいにしろ、と言われるかもしれないが。

*参考 参政党支持層の研究(古谷経衡) -エキスパート- Yahoo!ニュース. Available at: https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a8c540ceeac4bad06c7f110d2c927b1b0f2763e2. Accessed 22 July 2025.