選挙運動の期間も意識したい。インターネット、リアルを問わず、選挙運動が許されているのは公示日から投票日前日まで。公示日前にネット上で「次の参院選で○○候補を国会に送ろう」と書き込むと違反になる。
問題は、どのような書き込みが選挙運動にあたるのかという点だろう。判例・実務によると、選挙運動は、(1)特定の選挙において、(2)特定の候補者の当選を目的として、(3)投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為、とされている。これに照らすと、「あの政治家は優秀だ」は意見の表明なのでセーフ。「あいつを落選させろ」という書き込みも、選挙運動にはあたらない。
細かく見ていくと違反となる書き込みは限られそうだが、そもそも一般有権者がネットに何か書き込むとき、公示日の前か後かを気にしなくてはいけない状況はおかしくないだろうか。
落合弁護士は「事前運動の規制は撤廃してもいいのでは」と疑問を呈す。
「選挙運動を無制限にすると、公示前から戸別訪問が行われて有権者が迷惑したり、お金持ちの候補者に有利に働きます。こうした弊害を抑えるために選挙運動期間を規制しているのですが、インターネットを使った選挙運動は相手の負担になりにくく、お金もかからない。禁止する理由はないでしょう」
公職選挙法について、「言論の自由を過剰に規制する、問題のある法律」(落合弁護士)という評価もある。ネット解禁は、過剰な規制の一部緩和にすぎない。候補者はともかく、一般有権者にはもう少しのびのびと選挙運動させてほしいものだ。
(図版作成=ライヴ・アート)