「見える化」すれば未来が見える

あなたはご両親にあと何回会えるか、考えたことがありますか。そんなことはわからない。いつでも会える――。そう思ったあなたは、万が一のときに後悔してしまう可能性が高いでしょう。

では、頭を働かせて、実際に計算してみましょう。「離れて暮らす親に会える回数」という未知の数字を、まずは次のように分解して考えます。

〈1年間の帰省の回数〉×〈親が元気でいてくれる年数〉

父親の年齢が70歳だとします。男性の平均寿命は女性よりも短くて、約81歳。先ほどの式に〈年に2回〉と〈12年〉という値を当てはめてみると、会えるのはたった24回だけ。「そんなに少ないのか!」と思いませんか。重要なのが、その心のザワつきです。

具体的な数字が、ふだんは意識しない現実を突きつけてきます。人生の「リミット」を痛感させられるのです。両親との時間を大切にしよう。今日は実家に電話してみよう。人生の現実を直視しさえすれば、行動が変わります。

未知の数字を、知識や経験をもとにロジックで計算する思考法――これがフェルミ推定です。フェルミ推定を用いれば、目に見えない未来を可視化することができます。

フェルミ推定についてのよくある誤解は、「コンサルの採用面接で問われるヤツでしょ」というものです。確かにフェルミ推定はコンサルタントの必携スキルですし、「それが何の役に立つの?」と思っている人もいるでしょう。しかし断言します。フェルミ推定はすべてのビジネスパーソン、いや、全人類に必須の思考法と言っても過言ではありません。

たとえば、この先の人生設計についてファイナンシャルプランナーに相談すると、「今の年収を維持できる期間がこれくらいとして、支出はこれくらいで……」と試算してくれます。このとき使っているのはフェルミ推定です。

または、マッチングアプリで1年間に何人の異性とデートできるかもフェルミ推定で算出可能です。「わからない」「たくさん」で済ませがちなあらゆる現実を明らかにする方法。これこそがフェルミ推定です。

もちろん、フェルミ推定はビジネスにおいても強い武器になります。新商品やサービスがどれくらい売れそうか。プロジェクトの遂行にどれくらいの人員や期間が必要なのか。戦略立案、事業計画、市場規模予測……すべてのベースとなるフェルミ推定は、ビジネスリーダーや独立起業を考えている人に欠かせません。

ただ、私はあくまで、「ビジネスはプライベートの下位互換にすぎない」と考えています。プライベート、つまり大切な人との関係において使えないものをどんなに磨いても意味がない。