アイデアの源泉「感知力」を磨け

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「感知力」を高めるサイクル

持って生まれた才能で、ユニークなアイデアを次々に生み出す人も稀にはいる。しかし、多くの凡人は日頃の鍛錬なしにはナレッジワーカーにはなりえない。

その第一歩は、感じる力、すなわち「感知力」を磨くことである。ナレッジワーカーとは新たな知恵やアイデアを生み出すことができる人材のことである。そして、知恵やアイデアの源泉は、人間の持つ感じる力である。

世界初の編み機を次々と生み出す島精機製作所では、新入社員採用の面接時に「ちょっと立って、くるりとひと回りしてください」とお願いし、「何か感じましたか?」と尋ねるという。応募者の感知力を試しているのだ。ある雑誌の対談でお会いした際、島正博社長はこう教えてくれた。「ひと回りする1秒の間に何も感じなかったらゼロ。ゼロに何を掛けてもゼロ。たとえ1秒でも何かを感じる感性がほしい。感じなければ、一生何もなくて終わってしまう」。「五感で感じたことが、第6感(閃き)にゆきつく」と島社長は強調する。

それでは、どうすれば感知力を磨くことができるのか?

何より大切なのは、日常生活において「観察」する癖を身につけることだ。

観察とは意識して見る、すなわち「観る」ということである。常にアンテナを高くして、周りの事象や変化に目を凝らす。周囲の事象や変化に気づくことが、「感じる」ということである。

何かを感じれば、そこから頭が回り始める。なぜこうした事象が起きるのか、なぜ変化しているのか。何も感じなければ、問題意識は生まれず、思考は始まらない。

私が若者たちと出会った定食屋でも何かを感じることはできる。

「場末の定食屋なのにすごい人気だ」「日替わり定食を頼んでいる人が多い」「無骨そうな親父さんと愛想のいいおかみさんの2人だけで切り盛りしている」……。

何かを感じ、気づくことが起点となり、問題意識が生まれ、疑問を持ったり、「なぜだろう?」と考え始める。そして、それが自分にとっての新たな「発見」となり、「発想の芽」となる。

観察対象を変えることによって、新たな刺激を得ることもできる。私はできるだけ同じ道を通らないようにしている。いつも降りる駅のひとつ手前やひとつ先で降りて、歩くこともよくある。電車ではなく、バスに乗ることもある。

こうした行動は、異なる環境に身を置くことで、異なる観察対象と出会い、異なる刺激を得ることが目的である。アンテナを高くすることも大事だが、対象物がいつも同じでは、同じものしか知覚できない。「日常の非日常化」はナレッジワーカーになるためのとても効果的な方法論のひとつである。

デジタル全盛の時代だからこそ、アナログが武器になる。時にスマホや漫画を置き、街に出て、観察してみよう。街には感知力を鍛えるための材料がたくさん転がっている。

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