なぜ1on1に時間や労力をかけても効果が上がらないのか。パーソル総合研究所の児島功和氏は「こうした熱心なのに空回りしがちな上司のことを『1on1おじさん』と巷では呼ぶそうだ。われわれが行った実態調査で1on1が嫌われる原因がわかってきた」という――。
1on1ミーティング
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「1on1おじさん」と揶揄される上司たち

近年、多くの企業において、部下との定期的な面談を通じて成長を支援する「1on1ワンオンワンミーティング」(以下、1on1)が急速に普及しました。1on1とは、上司と部下が1対1で定期的に行う面談のことです。部下の成長を促すことを目的とし、業務の進捗確認だけでなく、キャリアや働き方などについても話し合い、部下の成長を支援するとされています。

しかし、1on1についての実態調査を行っていると、部下の成長のためにと始まったはずの1on1が、多くの部下から嫌われる存在になっていることがわかります。例えば、「上司ばかりが話をする」「上司の自己満足の場になっている」「時間が長すぎる・頻度が多すぎる」「業務に支障が出る」――などの声が聞こえてきます。

また、1on1に熱心に取り組む上司に対して、「1on1おじさん」と揶揄する声もあるそうです。例えば、業務の大半が部下との1on1で埋め尽くされ、「あの上司は、1on1ばかりやっている」と見られてしまう。我流で1on1を行った結果、部下の成長につながらず、1on1が上司の自己満足の時間になってしまっている――。こうした上司が「1on1おじさん」と揶揄されているのでしょう。

「1on1」が嫌われる3つの要因

部下の自律的な成長を促し、エンゲージメントを高める――そんな理想を掲げて導入されたはずの「1on1」が、なぜ部下たちから嫌われたり、揶揄されたりするのか。パーソル総合研究所が行った、1on1の実態調査を基に、その背景について考察すると、以下の3つの要因が挙げられます。

①「手探り状態」の果てに「量」で勝負

「面談について学ぶ仕組みがない」――。これは、1on1に関する実態調査の結果(図表1)、上司の困りごとで1位、部下にとっても2位になる困りごとでした。多くの企業で1on1が導入されたものの、その「目的」や「具体的な実施方法」が従業員に十分に説明されず、学ぶ機会も提供されていないのが実情です。

「とりあえず、やってみよう!」という掛け声のもと、手探りで1on1を始めた上司たち。効果的なやり方がわからないまま、「とにかく回数をこなせばいいのか?」「時間を長くすれば、もっと話してくれるのか?」と試行錯誤を繰り返します。結果として、質よりも量を追求する「1on1おじさん」が生まれてしまうのでしょう。

【図表1】1on1に関して困っていること(%)
※パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」