【田原】女性目線のプロというと?

【太田】そのフリーペーパーの主な読者はF1層(20~30代前半の女性)で、私たちと同世代。だから、「こんなふうに訴えかければ女性の読者さんのハートをつかまえられますよ」というアドバイスは可能でした。たとえばおじさんしか来なくて困っている新橋の焼きとり屋さんに、女子会コースをつくったらどうかとか、料理名も卵焼きじゃなくてふわふわオムレツにしましょうとか、生活者視線ということでは、私たちのほうが得意ですから。

【田原】新しい企画を提案するときに、コツはありますか。

【太田】お客様は、自分のお店に関して何かしらのこだわりを持っています。まずはそれをヒアリングして、強みであるコアコンピタンスな部分をむしろ伸ばすように、どれだけその周辺を盛り上げていくかということを考えて提案していました。

【田原】僕の友人のコンサルタントである堀紘一氏は、コンサル先で「ここがダメだ」と絶対に言わないそうです。相手は自社がダメなことをよく知ってコンサルを頼んでいるのだから、わざわざ指摘するまでもない。それよりも経営者が気づいていないいい部分を褒めたほうがうまくいくのだそうです。太田さんのやり方も、それと共通する部分がありますね。

【太田】どのお店にも、いいところは必ずあります。新宿御苑の裏にある喫茶店営業担当だったのですが、マスターとの打ち合わせ時に出てきたのが一切れのガトーショコラ。それがもうとろけるほど絶品で。そこで、「イタリアンのコースをつくり、女性が好きなガトーショコラを売りにして、その状況を私たちに表現させてほしい。コーヒー屋さんでなくてガトーショコラ付きコース料理を売ってみたらどうか」と提案したら、大当たりして、売り上げは過去最高になりました。お店の強みを引き出して、いい結果につながったときは、営業として醍醐味を感じます。