社会生活の中から自分で“問い”を見いだし、課題を立てて、調査・分析、まとめ・発表を行う「探究型学習」。2022年度から高校の学習指導要領に組み込まれたこともあり、探究型学習を導入する中学、高校が急増している。「従来の知識習得型教育と違って“正解”がないのが探究型学習の大きな特徴です」

こう語るのは、コアネット教育総合研究所の福本雅俊さんだ。

表彰状とトロフィーを持った女子高校生と教師
写真=iStock.com/Yuto photographer
※写真はイメージです
『プレジデントFamily2025春号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2025春号』(プレジデント社)

では、本当の探究型学習を実践している学校を選ぶポイントは何か。「一つは、教育活動全体を貫くコンセプトが探究型学習を意識した設定になっていること。もう一つは教職員の資質です。正解のない学びだからこそ、教員にも探究し続ける資質が求められます」(福本さん)

一方、声の教育社の後藤和浩さんは、別の視点を提示する。「探究型学習はいきなりできるものではありません。高校生になって質の高い探究を行うには、中学時代からのトレーニングが必要です。その意味で中高一貫校というのは有利。また、受験勉強の負担が少ない大学附属校は、高校3年まで探究が続けられ、より高い成果が期待できます」

福本、後藤両氏に挙げていただいた「お薦めの探究型学習校」を見ていこう。

芝浦工業大学附属【東京都・江東区/共学】

保健体育も芸術も科学技術と絡めて学ぶ

「中1では、全員で『パスタの橋』を作る授業があります。途中で折れたり、崩れたりするわけですが、芝浦工業大学の大学生、大学院生のサポートを受けながら、より強度の高いパスタの橋を作っていく。そんな授業を行っている学校です」

「パスタの橋」が完成。この後、水の入ったペットボトルを乗せて強度を競う
「パスタの橋」が完成。この後、水の入ったペットボトルを乗せて強度を競う

福本さんは、いかにも楽しそうにこう語る。「理系」ではなく「理工系」の学校と自ら任じている芝浦工大附属らしい授業だが、同校では国語や英語、芸術、保健体育といった教科においても、科学技術とその教科との関わりを考える『ショートテックアワー』という授業が設けられている。

保健体育であればパラリンピックの競技で使われる車いすの構造を考えたり、国語であればAI(人工知能)を使って文学作品を作ってみたりと、すべての教科が理工学的興味を抱く動機づけの一つとして位置づけられているのが特徴だ。「SHIBAURA探究」と称するプログラムは、中学では「IT」と「GC(グローバル・コミュニケーション)」の2本柱。「IT」では、Scratchでドローンを制御して遊ぶなど、ITツールを活用した学びが盛りだくさんだ。「GC」では、宿泊体験や海外研修などを通じて社会課題を見いだし、解決、発表するためのコミュニケーション力、発想力、創造力、課題解決力を身につける。中1の「湾岸プロジェクト」では、水陸両用バス・スカイダックに乗って、海から見た豊洲を考察する授業も。

工作用紙などで自作した分光器で光スペクトルを観察
工作用紙などで自作した分光器で光スペクトルを観察

そして、高校生になるといよいよ、理工系の知識で社会課題を解決する「工学探究」がスタートする。中学ではアイデアを出すまでだったが、高校ではプロトタイプを実際に作り、うまく動くのか検証するところまで行うという。「とにかくテクノロジーが大好きな子が多い。休み時間に仲間と図書室に飛び込んできて、空飛ぶ自動車を造ろうと航空工学の本を喜々として読みあさっているような、理工オタクばかりの学校です」(福本さん)

探究活動のサポートを、同校の卒業生や芝浦工大の学生、先生たちがしてくれるところも、大学と連携しているこの学校の強み。モノづくり大好きオタク垂ぜんの学習環境だ。

中1の授業「湾岸プロジェクト」では全員がスカイダックに乗車して豊洲を考察
中1の授業「湾岸プロジェクト」では全員がスカイダックに乗車して豊洲を考察