グローバル化した企業では、仕事の規格化が進んでいます。誰がやってもある程度の成果は出るようになっているのです。このため事業拡大にともなって必要となるのは、大量のコモディティ人材となります。自動車メーカーが、コモディティ化された部品を採用することでコストダウンを図ってきたように、採用では、能力が同じであれば、求職者の中から最も安い給料で雇える人を採用します。近年の日本で賃金の下落が始まっている本質的な理由もここにあります。

ユニクロや楽天などの企業では「英語公用語化」を進めています。そうした動きに影響を受けたのか、英語学習を始める人も増えているようです。しかし脱コモディティ化のために英語を勉強したり、会計やITなどの資格試験の取得を目指したりすることは、あまり意味がありません。これらは「不安解消マーケティング」の1つにすぎないのです。

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相関と因果を取り違えてはいけない!

ユニクロや楽天はグローバル市場で利益を出す仕組みが完成し、大量生産・大量販売の拡大フェーズに入っています。世界各地で同様の業態での展開を計画しており、そのために英語がある程度話せて、安い給料で雇えるコモディティな人材を採用したいのです。そこで働く人が英語のスキルをいくら身につけても、コモディティからは抜け出せません。第一、本当に英語がビジネスで必要ならば、そのたびに通訳を雇えばいいのです。

昨今では、英語力のほかにも「地頭力」を鍛えたり、「ロジカルシンキング」を身につけたりする勉強法が流行していますが、学習自体が目的化しているように思います。相関関係と因果関係を取り違えてはいけません。「優秀な野球選手は足が速い」という相関は正しいでしょう。しかし「足が速ければ優秀な野球選手だ」という因果は断定できません。同様に、「高年収のビジネスマンは英語が堪能」とはいえますが、「英語が堪能ならば年収が高くなる」とは言い切れないでしょう。

京都大学客員准教授 瀧本哲史
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。東京大学法学部卒業。学卒後、助手経験を経て、マッキンゼーでコンサルティングに従事。独立後は、企業再生やエンジェル投資家としての活動をしながら、京都大学で教育、研究、産官学連携活動を行っている。
(構成=大越 裕 撮影=川隅知明)
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