いま「本物の資本主義」が日本社会を揺さぶっている。大きな仕組みには、もう頼ることはできない。自分で考え、自分で決めるための「武器」とは──。

弱点の補強はやめて「強み」に集中投資

「脱コモディティ化社員」となるにはどうすればいいのか。私は自著の中で、今後、プロフェッショナルとして生き残れる日本人のタイプを、4つに分類しました。

京都大学客員准教授 瀧本哲史氏

1つ目が商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができるマーケター。次にまったく新しい商品や仕組みをつくり出すことができるイノベーター。3つ目が起業家として事業を起こし部下を束ねるリーダー。最後が投資家として市場に参加するインベスターです。戦略コンサルタントや経営者あるいは投資家として、多くのビジネスリーダーを間近に見てきた私の経験からも、ビジネスで成功している人は、いずれもこの4分類やその組み合わせに当てはまります。

ある人はファストフードの店長を長年務めていましたが、あまりの激務に体を壊して退職しました。その後まったく別の業界に転職したのですが、外食産業で働いたことで、複数のアルバイトを効率的に使うスキルを身につけていました。そこで彼は、転職した業界で「専門知識がなければできない」とされていた営業業務をマニュアル化し、大量のアルバイトを雇い新規開拓することで、会社の利益を大きく伸ばすことに成功しました。これは既存のやり方を変革するという点でイノベーター的であり、人を効果的に使うという点でリーダー的といえます。

また保険業界で有名なある女性営業マンは、さまざまな業界の中小企業の経営者とつながりができるという職種の特性を活かして、「この人にあの社長を紹介すれば喜んでくれそう」と考えるようになりました。そして社長同士を引きあわせ、中小企業同士が互いにメリットのあるパートナーシップを結べるよう、関係構築に尽力しました。彼女に顧客を紹介してもらった社長は大いに喜び、自ら進んで保険に加入し、社員や取引先にも彼女の保険を勧めるようになりました。そうした「紹介」を基本にした営業手法により、ほかの営業マンの何倍もの売り上げを達成するようになったのです。これは同じ商品でも売り方の仕組みを根本から変えるという点で、優れてマーケター的な働き方であるといえます。