仕事への「本気度」を桁違いに上げる方法

個人の働き方においても、このような非連続的な変化を起こせるかどうかが、鍵となります。それはどんな職場でも可能で、あらゆる業界に「普通のやり方」と、圧倒的に生産性を高める「普通でないやり方」があるはずです。

その方法を発見するために、最も効率のいいやり方は、自分の働く業界に関して、誰よりも詳しくなることです。それも狭い業界の枠組みを超えて、俯瞰的に業界全体を捉えてみる。そのうえで業界の中の非効率なところや、ユーザーに不便を強いているシステムを正すことを考える。これは誰にでもできて、なおかつ勝てる公算が大きいチャレンジとなります。

俯瞰的に捉えるということは、「経営者だったらどう考えるか」という起業家・投資家としての精神を持つことです。ビジネスでは、自分の判断が正しければ得をする、間違っていれば損をするという立場に身を置くことが大切です。そうすることで自分の「本気度」が桁違いに上がります。

私がある会社に投資した際には、その経営に関わるメンバー全員から、数百万円から1億円程度の出資を集めました。そうすると週1回の経営会議で、練り込みの足りない案を出した人間に対しては、メンバーが本気で怒るようになります。「自分の金がかかってるんだぞ」という意識が共有され、日本企業にありがちな無責任体質が一切なくなる。そういう真剣さが、業績向上につながるわけです。

それに対しサラリーマン意識で働いている人は「結果を出さなくても別に関係ない」と思っています。それは自分が一生懸命働かずとも、毎月決まった額の給料がもらえるからです。しかしそのままではコモディティ人材からは抜け出せませんし、自分の生殺与奪の権限を会社に預けるという大きなリスクを負うことにもなります。

私は独立のすすめを説いているわけではありません。独立すれば、脱コモディティ化が図れるわけではない。むしろ事業のコモディティ化で苦しんでいるベンチャー企業は少なくありません。企業規模が大きいほど、社内には使えるインフラがたくさん眠っています。多くの場合、その資産は活用されていません。また社内ベンチャーという形で、社員の新しい取り組みをバックアップする企業も増えています。

投資先で人材採用を行うとき、面接で必ず聞く質問があります。

「いままであなたがやってきた仕事の中で、最も会社を儲けさせた仕事は何ですか。チームで取り組んだ仕事の場合、あなたがそこで果たした役割は何ですか」

これに答えられない人は基本的に採用しません。逆にきちんと結果を出してきた人は、この質問に即答できるはずです。とにかく結果を出し、自分の会社を成功させることにフォーカスしてみる。言われたことを単純にやるのではなくて、本質的に自社を成功させるためにはどうすればいいか、真剣に考えて行動することです。その結果が、自分の成長と報酬に直結します。

私はこれからの日本を、新しい事業や取り組みが次々に生まれ、失敗はあっても、同時に大成功する人々が現れるような社会にするべきだと考えています。グローバル化による「本物の資本主義」の世界の中で、日本人が生き抜くためには、社会をより資本主義的なモデルに変えていく必要がある。大企業で働く30代から40代のエスタブリッシュメントが、リスクを恐れず変化することで、必ず日本はよくなるはずです。

京都大学客員准教授 瀧本哲史
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。東京大学法学部卒業。学卒後、助手経験を経て、マッキンゼーでコンサルティングに従事。独立後は、企業再生やエンジェル投資家としての活動をしながら、京都大学で教育、研究、産官学連携活動を行っている。
(構成=大越 裕 撮影=川隅知明)
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