会社にとって「一番いいこと」を追求
――同業3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)のコンテナ船部門統合には懐疑的な声も多かった。
【岩井】難しいポイントはいくつもあった。3社は100年来のライバル会社で、急に一緒になると言われても仲間意識は芽生えにくい。3社がそれぞれ、世界中に組織と人を抱え、企業文化も業務の進め方も異なっていた。また統合を進める際には、独禁法に抵触しないよう各国の規制当局にも粘り強く真摯に対応していく必要がある。限られた時間と人員のなかで、2018年3月末まで3社が事業を継続しつつ、新会社を円滑に立ち上げるという極めて難易度が高いプロジェクトだった。
そこで選んだのが「ビッグバン方式」だ。3社の融合ではなく、新しい会社をゼロからつくる。出資比率は日本郵船が38%、商船三井と川崎汽船がそれぞれ31%でほぼ対等。このような経緯で誕生したがゆえにONEは全く新しい会社となり、社内に派閥もない。
――ビッグバン方式で特にポイントとなったのは何か。
【岩井】過去の事業統合や合併の事例を検証して、大きなハードルはITシステムの統合と人の融合の2つだと考えていた。まずITシステムでは、3社のシステムを全部残して繋いだら絶対にうまくいかない。ONEでは、3社の中からもっとも新会社に適したものを1つだけ残し、そのまま基幹システムとして採用した。追加で行ったのは、3社分のデータをハンドルできるような拡張作業だけだ。システム改修自体は行っていないので、大きな障害が発生することもなかった。使い慣れない社員は最初戸惑っただろうが、半年もするとみな使いこなせるようになった。
――社員の統合では、どのような工夫をしたのか。
【岩井】人のところは一筋縄ではいかないと覚悟していた。17年に、シンガポールの仮オフィスに初出勤した日のことはよく覚えている。さまざまなバックグラウンドを持った社員が集まったが、みんな不安だったのか、自分が知っている人としか話そうとしない。
不安を取り除くため、その後オープンした新本社オフィスでは、どの会議室もガラス張りにし、全員をワンフロアに収めて見た目のうえでも「トランスペアレンシー(透明性)」にこだわった。話しやすく、交流しやすい雰囲気を持ったオフィスとし、17時半以降はビールも飲めるようにして交流を促した。
膝を突き合わせると、違いより共通点のほうが多いことに気付いた。表面的なシステムや言葉が違うだけで、根本にある思いや考え方はあまり変わらない。お互いに、なぜこのような業務の仕方をしていたのか、なぜそれがいいと思うのかを話し続けるうちに、「それならONEにとって一番いいのは、このやり方だ」と納得する瞬間が来る。あらゆるところでベストプラクティスを追求する過程で、自然と不安は払拭され、信頼関係も生まれていった。
非常に目立つコーポレートカラーのマゼンタも、世界中の社員たちに、全く新しい会社に生まれ変わるという決意を表現したものだ。「AS ONE, WE CAN.」のスローガンは設立時のキャンペーンの一環で作ったが、今も多くの社員が使い続けている。時間はかかったが、「ONEのために一番いいことは何か」を愚直に追求し続けたことで、社員の意識はまとまっていった。いろいろな人と出会い、力を合わせて新しいことを成し遂げるという企業文化・価値観こそが、若い会社であるONEの強み。社員がチームワーク良く働くことが企業の競争力の源泉であり、そのように働ける会社の存在が、個人の幸せに繋がってほしい。
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