値段の高さでアピール:中国製の2倍近い値段で飛ぶように売れる

サヒビール牛乳「唯品」/農場経営から手がけることで、中国消費者の圧倒的な信頼感を獲得した。

粉ミルクと並んで日本製の安全性に対する信頼が高いのが、牛乳だ。

中国では08年に、乳業メーカーが牛乳や粉ミルクに有毒のメラミンを混入させていたことが発覚する事件があった。数十万人の乳幼児が被害に遭ったとされ、なんと、関係者のうち数名は処刑されてしまった。このメラミン事件以降、国産の牛乳に対するアレルギーが高まり、値段が高いにもかかわらず外国メーカーの牛乳に人気が集まっているのだ。

日本国内ではほとんど知られていないことだが、アサヒビールは中国では有名な「乳業会社」である。山東省に農場を所有して乳牛を飼育し、その糞を堆肥にして化学肥料に頼らない野菜を作るという循環農業を実践している。

メラミン事件は、このアサヒの農場で作られる「唯品」という牛乳に圧倒的な信頼感を持たせることになった。

「唯品」の小売価格は、1リットルパックが23~25元(日本円で300円程度)。中国製の牛乳が11~16元ぐらいだから、安い中国製と比べれば2倍近い値段である。それでも「唯品」が飛ぶように売れるのだから、中国人の「食の安全」への希求は日本人の想像をはるかに超えるものだと言っていいだろう。

アサヒの「唯品」の場合、安全性の高さが売りだけに、価格はむしろ高いほうがいいという見方も成り立つ。中国製並みに安ければ、同等の危険性を孕んでいると思われかねない。つまり値段の高さでアピールしているのだ。食の安全が担保されていない中国では、安ければ売れるとは限らないのである。