中国製への不信感:爆発するから触らないほうがいい!
中国人の中国製への不信感には、すさまじいものがある。その一例が「山賽機」。山賽機とは中国政府非公認の模造携帯電話のことを指し、値段が安いために一時期大流行した。筆者も知り合いの中国人から1台もらい受けたのだが、それを中国人の部下に見せると、
「爆発するから触らないほうがいい!」
という反応であった。
中国は模造品が横行する社会だが、その危うさを一番よく知っているのは当の中国人なのである。まして、赤ちゃんの口に入るものとなれば中国製に対する猜疑心はいやが上にも高まる。わが子に中国製の粉ミルクだけは与えたくないというお母さんが、中国には大勢存在するのである。
そこで俄然脚光を浴びるのが、日本製の粉ミルクだ。中でも明治ブランドに対する中国人の信頼には、揺るぎないものがあった。中国に駐在している日本人ビジネスマンが日本に一時帰国する際、中国人スタッフから頼まれるお土産の定番といえば「明治の粉ミルク」だったのである。
しかし、福島第一原発の事故がこの明治神話に水を差すことになってしまった。事故の影響で明治の粉ミルクから微量のセシウムが検出されたことは中国でも大きく報道され、さすがの中国人もこれにはたじろいだ。しかし、驚くなかれ筆者の周囲では、
「たとえ微量のセシウムが混入していても、中国製の粉ミルクを飲ませるよりはまだマシ」
という声が多かったのである。
明治が中国国内に粉ミルクの工場を建設し、日本の技術で品質管理をしてくれればベストだという意見は確かにあるが、一方では、いくら日本の技術でも、中国国内で生産されたものよりは、日本国内で作られたものが欲しい、という中国人も多い。
セシウムか中国製か。原発事故は、日本の粉ミルクに絶大な信頼を寄せてくれていた中国のお母さんたちに、究極の選択を迫ることになってしまったのである。