尖閣諸島海域で発生した事件をきっかけに、数年ぶりに中国で大規模反日デモが爆発した。リスクを抱えながら中国に依存せざるをえない日本企業は今、どんな対策をとればよいのか。

中国が領有権を主張する尖閣諸島沖で、中国漁船が海上保安庁巡視船と衝突。(PANA=写真)

中国が領有権を主張する尖閣諸島沖で、中国漁船が海上保安庁巡視船と衝突。(PANA=写真)

中国における政治リスクが再び顕在化してきた。きっかけは9月に尖閣諸島海域で発生した中国漁船と日本の海上保安庁巡視船の衝突事件だが、次期総書記・国家主席候補の習近平氏を中心とする上海閥・太子党と現在の胡錦濤・温家宝体制の権力闘争も背景にあるとささやかれている。ならば、権力移譲が完了するまでの今後何年かは、日中関係はより緊迫化し、チャイナリスクが増大する可能性もありそうだ。

一方で「チャイナ・プラス・ワン」として他の新興国に生産拠点を分散することを提唱する意見もあるが、新興国にもそれなりのリスクがある。日本企業はこれらリスクにどう向き合うべきなのだろうか。

「中国のリスクで一番手におえないのが反日感情」と広東省広州市在住の日系コンサルタントは言う。これは日中の戦争の歴史の影響も大きいが、中国共産党はしばしば反日感情を政治的に利用することも、対日外交圧力として利用することもあったという点では、明らかに政治リスクのひとつといえる。

10月16日、17日、18日と内陸部など複数の都市(四川省の成都・綿陽、陝西省西安市、河南省の洛陽・鄭州、湖北省の武漢、浙江省の寧波・杭州など)で同時多発的に発生した反日デモは、まさしくそういう政治リスクとしての反日感情の顕在化だったろう。

成都市ではイトーヨーカドーや伊勢丹の窓ガラスが割られシャッターが破壊され、近くの日本料理店が襲撃された。同じ日に発生した西安市では日系スポーツメーカーのミズノ、ソニーの店舗が襲撃された。綿陽市でもパナソニックの店舗が襲撃された。各地で日本車が襲撃され、その無法ぶりを示す写真や動画はネット上に散見する。