対策1「コメ政策を官房長官直轄とする」

では、石破総理は何をなすべきだろうか?

昨年夏から、農水省はコメの値段を下げることに否定的な態度をとり続けてきた。23年産米が猛暑の影響を受けていたことは23年秋にわかっていた。生産が減少し供給が不足したのだ。

昨夏スーパーからコメがなくなった際、卸売業者等の在庫が40万トンも減少しているのに、卸売業者が売り惜しんでいるからだと卸売業者の責任にした。秋に新米が出始めると価格が落ち着くと誤った見通しを示した。しかし、最近に至るまで流通在庫が前年同月比で40万トン以上減少している状況からすれば、新米を先食いしていたことは明らかだった。供給が不足しているので、需要と供給の経済学通り、その後コメの値段は高騰した。

すると、農水省は得体のしれない業者がコメ流通に参入し投機目的で買い占めているからだと主張を切り替えた。農水相も繰り返し、流通段階でコメがスタックしているからコメの値段が下がらないと発言している。“消えたコメ”である。これが農協の集荷量の減少21万トンに見合うのだと言った。一貫して流通業者が悪いのだという主張である。

しかし、農水省は一度もこの“消えたコメ21万トン”の存在を明らかにしていない。どこかにあるはずなのに確認できない“幻のコメ”である。同省は、備蓄米の放出はこの流通の目詰まりを解消するためのもので、備蓄米を放出するとこのコメが市場に出てくると主張していた。そうであれば、市場の供給量が備蓄米の放出量の倍の42万トン増加し、米価は相当下がるはずだが、一向にその気配はない。遅ればせながら、騙されていたマスコミも、最近では“消えたコメ”はないのではないかと疑うようになってきた。また、既に述べたように、農水省は備蓄米を放出してもコメの値段が下がらない仕組みを組み込んでいる。

要するに、農水省はコメの値段を下げる気はさらさらないのだ。農水省が目を向けるのは、JA農協を中心とする農政トライアングルである。米価を高め零細な兼業農家を温存してそのサラリーマン収入をJAバンクの預金として活用したいJA農協、その関連組織に天下りしたい農水省、JA農協が組織する票に依存する自民党農林族議員。かれらには、国民や消費者の姿は映らない。このような組織に、コメについての“強力な物価高対策”を任せることは不適当である。

林官房長官は農水大臣の経験もあるし、農政トライアングルに染まっている議員でもない。官房長官の下で、コメ対策についての方針を決定し、それを農水大臣を通さずに直接農水省の業務担当に指示する体制を講ずるべきである。

林芳正内閣官房長官
林芳正内閣官房長官(自民党HPより)

対策2「備蓄米は卸売業者や大手スーパーに直接販売に変更」

現在備蓄米は、ほぼ全量JA農協に販売されている。JA農協は米価低下を恐れて備蓄米の放出に反対してきた。備蓄米21万トンが卸売業者に流れても、JA農協が従来卸売業者に販売していた21万トンを販売しなければ、市場への流通量は増えず、コメの値段は下がらない。これまでも、JA農協は在庫を調整することでコメの値段を操作してきた。

食糧法(「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」)は備蓄米の放出先を農協などの集荷業者だけでなく、卸売業者やスーパーなどの流通業者にも認めている。農水省がその放出先を農協などに限定したのは、備蓄米を放出してもJA農協は市場への供給を増やさないという目論見があった。備蓄米は農協に販売することをやめ、消費者に近い卸売業者やスーパーなどに販売すべきである。

同時に、備蓄米の買い戻し特約という条件を廃止すべきである。これまで、このような特約を付けて放出することはなかった。米価を下げまいとする農水省の姑息こそくな手段である。