駅伝強豪・大牟田高校“集団転校”のウラにあるもの
全国高校駅伝準優勝校の“集団転校”が話題になっている。
全国高校駅伝で5度の優勝を誇る名門・大牟田高(福岡)の赤池健ヘッドコーチが新年度から鳥取城北高の監督に就任。赤池氏の指導継続を求めた大牟田高の長距離部員19人中18人が鳥取城北高へ転校する見込みだという。
果たして、この判断は正しいのかどうか。選手の意思や希望を尊重することも大切だが、今回の集団転校には高校スポーツ界を考えるうえで、さまざまな問題が潜んでいる。
赤池氏にあった体罰問題
ことの発端は赤池氏の体罰問題だ。
赤池氏は大牟田高の監督時代、部員に対して平手打ちなどの体罰を行っていたことが発覚。2023年4月に退職願を提出した。しかし、部員や保護者の要望を受けるかたちで、学校は部活のみを指導する「部活動指導員」として赤池氏を復帰させた。その後はヘッドコーチという肩書ながら、実質、駅伝部の指揮を執っていた。
2021年と2022年は全国高校駅伝の出場を逃したが、2023年は3年ぶりに出場して6位入賞。2024年は2位と赤池氏が監督に就任した2006年以降、最高成績となった。結果的に、体罰問題から右肩上がりで結果を残していることになる。赤池氏の教え子には今年の箱根駅伝でも活躍した太田蒼生(青学大)、馬場賢人(立教大)らがおり、選手育成力は多くの関係者が認めている。
過去に体罰問題で退職した指導者のなかには、部員や保護者から熱烈な支持を受けていた者がいた。赤池氏と同じように結果を残すという意味では“抜群の指導力”があったからだ。
大きな実績を残している赤池氏に対して、学校は教諭(&駅伝部監督)から駅伝部ヘッドコーチに“降格”したことで、収入面でも影響があったと思われる。さらに、同校は監督に同校OBを招聘することを決め、赤池氏を排除するような動きに出た。それを受け、待遇などを考慮して、新天地からのオファーを引き受けたのではないだろうか。
もし、過去の体罰問題がなければ、大牟田高での指導が続き、今回のような騒動は起きていなかったと考えられる。赤池氏の鳥取城北高監督就任はいわば“転職”であるため、外野がとやかく言う問題ではない。しかし、今回の“集団転校”は考えないといけない問題がたくさんある。