墓石はネットで安価に販売されている

近年、石材は外国産が主流になりつつある。圧倒的に輸入量が多いのが中国で、ついでインドやベトナム、台湾などとなっている。現在、ネットなどを通じて墓石が安価で販売されているが、その多くが中国で採掘、加工されたものだ。

同じ御影石の墓石で、国産に比べ中国産は半分〜3分の2の価格。とはいえ、中国産が国産の石よりも劣っているということではない。はっきり言って、プロの目でも国産と中国産の石を見極めるのは難しい。

近年、墓じまいの受け皿となっている納骨堂や樹木葬、あるいは海洋散骨の普及によって旧来からの墓石の需要が減ってきているのが実情だ。だが、墓をつくる動きが決して衰退しているわけではない。

京都の墓のサイズは小さい
撮影=鵜飼秀徳
京都の墓のサイズは小さい

厚生労働省の『衛生行政報告例』(2023年度)によれば、全国での墓地数は増加傾向にある。2020(令和2)年は86万8299カ所だったのが、2023(令和5)年度では87万5200カ所と、7000カ所ほど増えている。納骨堂も1万3038施設(2020年度)だったのが1万3767施設(2023年度)と、3年間で700施設以上増加した。「墓づくり」はむしろ、過熱しているのだ。高齢化による多死社会という要因もあるだろう。しかし、それだけではないのではないか。

墓の真骨頂は、重量があり、簡単には動かせない「石」という素材にあるといえる。石はいわば、故人が歩んできた足跡を刻む、最強の記録メディアといえる。そうした思いを抱く人の存在が、墓じまいの流れの中で「墓づくり」という新しい動きを生み出しているのかもしれない。

【関連記事】
なぜ日本でもこれができないのか…「墓じまい」に苦労した92歳女性が驚いた「スウェーデンの超合理的な霊園」
上野千鶴子氏の「老人ホームは嫌」が物議…現役医師「公費による延命と手厚い介護は見直す時期がきている」
なぜ国費3億2500万円あまりの皇族の葬送儀礼は簡略化されないのか…宗教学者「カギを握るのはこの人物」
10日以上の「火葬待ち」になる異常事態…墓に入るために"行列"ができる「多死社会ニッポン」の悲しい現実
江戸時代の放火犯は「火あぶり刑」だったが…吉原を全焼させた「14歳の遊女・姫菊」が受けた"刑罰"