時代に求められる商品やサービスはどのように生まれるのか。発売2年で年商136億円にまで育った夜間美容ブランド『YOLU』を展開するI-ne執行役員CSOの伊藤翔哉さんは「全社コンテンストで募ったシャンプーのアイデアのうち、1位の『高濃度ビタミンシャンプー』の方がデータとしては良い結果だったが、2位の『夜間美容』を選んだ」という。北の達人コーポレーション社長の木下勝寿さんが聞いた――。

※本稿は、木下勝寿『なぜあの商品、サービスは売れたのか? トップマーケッターたちの思考』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

シャワーを浴びて自宅で髪を洗う女性
写真=iStock.com/GabrielPevide
※写真はイメージです

「夜間美容」というコンセプトのシャンプーが生まれた理由

【木下勝寿(北の達人コーポレーション社長)】それにしても『YOLU』は何が理由でここまでヒットしたんですか?

【伊藤翔哉(I-ne執行役員CSO)】発売したのが2021年とちょうどコロナ禍で、「おうち美容」が流行ったタイミングだったことが大きかったです。

寝ている間に髪が傷むことはエビデンスとしても出ているので、トレンドも含めて就寝中の髪のケアという「夜間美容」のコンセプトが受けたのが大きな要因でした。

【木下】「夜間美容」というコンセプトってそれまでなかったんですか?

【伊藤】シャンプーとしてはなかったんですが、他のアイテムとしてはナイトキャップなどがあって、寝ている間に髪をケアするという需要はあったんですよ。それをシャンプーでケアできないかなと。

【木下】なるほど。僕らもシャンプーを商品化しているんですが、難しいのが「とはいえシャンプーだよね」という結論にいつも行き着いてしまうんですよ。

つまり新しいコンセプトや機能をどれだけ乗せても「とはいえシャンプーにそこまでの値段つけられないよね」という部分が、どうしても乗り越えられないんです。その辺も含めて、YOLUはどのようにして生み出されたのでしょうか?

【伊藤】YOLUって全社員からシャンプーのアイデアを集めるコンテストから生まれたブランドなんですよ。コンテストで集まった全アイデアをマーケティング部門や商品開発部門などのメンバーが集まってある程度の数に絞り、そこからお客さんやバイヤーさんなどの声を集める市場調査、ECモールなどのトレンド調査をしました。

この段階で「夜間美容」というコンセプトは2位だったんですが、経営陣や各セクションの責任者が集まる最終の意思決定の場は、定量的な調査結果を定性的に議論して、みんなが納得するものに決めるというのが弊社のやり方で、そこで『YOLU』に最終決定した、という流れです。