価格競争の消耗戦からソリューション提供へ。宅急便の個数増を追うより、お客様の声を聞き逃さないようにしようと考えた。

横田は畳1畳大のパネルを手づくりし、壁に掲げた。顧客からこんな相談を受けたら、こんなサービスを提案し、メリットをこう説明しよう。パネルには、ヤマトロジスティクスが手がけるTSS、ヤマトシステム開発の情報系サービス、海外で荷物に宅急便の送り状を張りつけ、直接国内の目的地に届けるヤマトグローバルロジスティクスジャパンの輸出入関連サービスなど、需要が見込まれるグループ企業のサービスが並んだ。相談されたら、各社の担当者とタッグを組んで対応する。この挑戦が全社に波及するとは、横田は思ってもいなかった。

業績は好転。ある日、関西支社長が視察に来た。「社長の前で発表だな」。11年8月、本社経営陣が各地域に出向き、直接提案や報告を吸い上げる「エリア戦略ミーティング」(詳しくは後述)の場で、横田はプレゼンを行った。第一線のセンター長としては初めてだった。

11月末、社長賞受賞。翌12年4月、全社をあげてセンターソリューションが開始される。横田のパネルをモデルにした現場での勉強会用資料もつくられた。プレゼンを受けた山内が話す。

「グループで一番多い営業マンは約6万人のSDです。どうすれば、その力をもっと活かせるか。お客様の困りごとを見つけることをフッキングと呼んでいますが、箕面船場東センターでは、グループ各社の機能を結びつけてソリューションまで提供していた。これこそがうちの強みで、全社に広げようと決めました」

価格競争の消耗戦からソリューション提供へ。提案内容によっては、必ずしも宅急便の個数増に直に結びつくとは限らないが「それでもいい」と横田はいう。

「お客様が仕事がしやすくなって、1時間早く帰れるようになるなら、それでいいんです。結果としてうちの利益に結びつくかもしれません。個数を追うより、お客様の声を聞き逃さないようにしよう。みんなが同じ方向を向き、同じ目的でやっていこう。意識が変わりました」