「記者会見は生放送」が当たり前になった

会見を最初から最後まで見て、感じたことは「記者会見のエンタメ化」が、行くところまで行ってしまったなとの印象だ。これまでもYouTubeなどネット配信される会見では、「質問と称する要求」が飛びかっていた。

しかし今回、フジテレビが「月9ドラマ」も飛ばしてまで、全編中継したことにより、図らずも現代日本のジャーナリズムが抱える問題点が、ネットを見ない層にも伝わったと言えるだろう。

なぜ、こうした事態になったのか。その背景には「会見中継の一般化」と「メディアへの参入障壁の低下」がありそうだ。これらが掛け合わさった結果、記者会見がエンタメ化したと、私は考えている。

「一般化」から見てみると、テレビ全盛期の記者会見は、最初から最後まで全編中継されることが少なかった。ちょうど生放送番組とタイミングが合えば、その部分だけは流されるが、随時CMが挟まるうえに、番組枠も限られる。結果として、頭を下げる場面や、弁明する発言のように、音楽でいう「サビ」の部分だけが、ニュース番組で流されるのが定番だった。

それが、ライブ配信が普及して以降、注目の会見は始めから終わりまで、リアルタイムで中継されることが一般的になった。2019年の吉本興業「闇営業」問題や、2023年の旧ジャニーズ事務所の性加害問題、中古車販売業「ビッグモーター」の保険金不正請求問題などを、ネット配信で見た人も多いだろう。

スマホで動画を見る人
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誰でも記者を名乗れ、配信できるように

そこに重なるのが、「参入障壁の低下」だ。ネットを主戦場とするビデオジャーナリズムの動きは、民主党政権による行政改革で会見オープン化が図られたことで加速し、東日本大震災と福島第一原発事故で定着した。

一方で2010年代前半における会見のリアルタイム化は、資本力や技術力、もしくは「それを上回る熱意」を持つ、一部の人物のみに限られた。しかし2010年代後半に入り、在野ビデオジャーナリストの主戦場が、USTREAMからYouTubeへ移るとともに、簡素な機材でもライブ配信が容易になった。

そうした環境の変化によって、「一億総(自称)ビデオジャーナリスト」の時代が訪れた。注目されるごとに収益が増えていく、いわゆる「アテンションエコノミー」を追い風に、さらなるインパクトを求めるYouTuberも増えて、「迷惑系」と呼ばれる新勢力も参入した。