「予定調和」を乱すために躍起になっている

その後、東京都の豊洲市場移転問題(2017年ごろ)をめぐる小池百合子知事の会見などから、テレビも「同時中継」を行う機会が増えたと記憶している。これは謝罪ではないものの、前都政からの不祥事として「築地か豊洲か」の二者択一で描かれていたため、まさにエンタメ的に認識していた人も多いのではないか。

かくして会見は、エンタメ化した。その背景には、視聴者と取材者の利害が一致した「共犯関係」があるように感じられる。視聴者は「会見をもっと面白くしてほしい」、取材者は「よりセンセーショナルな言動を引き出さなくてはならない」といった意識を持ち、当初想定されていた「予定調和」を乱すべく、血道を上げている。

エンタメ化の終着点は「閉ざされた記者会見」への回帰

当然ながら、本来の意図を離れた「会見報道」は、開催する側には望まれない。メディア側の人間からすれば残念だが、おそらく今後は、取材者を限定した「クローズドな会見」に回帰していくだろう。せっかく手に入れた情報アクセスの権利を、メディア側が雑に扱ったのだから仕方ない側面はある。

入ることを禁じられた入り口
画像=iStock.com/erhui1979
※画像はイメージです

しかし、エンタメ的に楽しんだ視聴者も、その先ずっと支持してくれるとは限らない。熱が高ければ高いほど、ひとたび飽きてしまえば、一気に離れていく。とは言っても、よりセンセーショナルな見せ方をできるかのチキンレースでは、どこかで限界が訪れる。そこに残るのは、オワコン(終わったコンテンツ)と化した取材者と、閉ざされた会見場のみだ。

なにより、コンテンツとして消費されてしまえば、その後には教訓も何も残らない。本来であれば、今回のフジ会見は「企業コンプライアンスの教材」として学べるはずだが、映像として目立った「記者の不規則発言」にフォーカスされてしまえば、焦点がブレてしまう。こうしたエンタメ化による弊害を考える上でも、エポックメイキングとなった会見と言えるだろう。

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