アウトプットすると脳内のネットワークが強化される
脳の基本的な仕組みとして、アウトプットすると脳内のネットワークが強化されることが知られています。たとえば、漢字を覚える際、見るだけでなく書いたほうが記憶の定着が良くなります。英単語も書くだけでなく発音しながらやると良いことは、よく知られているでしょう。放っておけば忘れてしまうような自分の体験も、人に話すことで記憶に残るということがあります。これもアウトプットの効果です。
「明日あの人に会ったら、この話をしよう」。そんなふうに考えることが、誰にもあると思います。「この情報をブログにアップしよう」「このアイデアを企画書に盛り込もう」という具合に、体験や情報を頭の中に留めておいて、アウトプットするのは日常茶飯事です(図表1)。ただ多くの場合、何気なくやっていて無意識です。無意識の場合、たまたまその必要に迫られればするけれども、その機会がなくなるとしなくなることも考えられます。今、アウトプットをする機会が十分にある人は、ぜひ適当にやり過ごさず、機会を活用するのが良いと思います。最近そのような機会が少ないと感じる人は、意識して作ることをおすすめします。
本当に頭を使ったかどうかを確認する方法
「明日伝えよう」と思っていて忘れてしまったとしたら、忘れてしまったのですから、脳はアウトプットしなかったことになります。外からはうかがい知れない頭の中ですが、本当に頭を使ったのかどうかを明らかにすることは可能で、確認する有効な方法が、コミュニケーションを通じたアウトプットなのです。何かしらアウトプットできたということは、そのアウトプットに必要な活動を脳が行ったらしいということが確かめられます。
認知機能を保つために、「公園へ出かけて観察しましょう」「もっと人生を楽しむ方法を考えてみましょう」と提案したとします。実際に、本人が観察し、考えたとしても、本当に観察したか、本当に考えたかどうかはわからないわけです。きちんと課題をやったつもりでも、頭の中に課題を置いてぼんやりし、「観察した」「考えた」と思っているだけの可能性もあります。
また、脳はアウトプットしようと思っているから覚えてくれます。何かに感動したり、驚いたり、新しい発見をしたことを覚えておいて、誰かに伝えようと考えているだけで、脳はそのように働こうとするのです。