念のために書いておくと、抗がん剤がいけないと言っているのではない。大部分の人は、すい臓がん用の抗がん剤を打って気分が悪くなることはあっても、それが原因で生死の境をさまようようなことはない。要は、抗がん剤が私には合わなかったのだ。

朦朧とする意識のなかで、なぜ私が入院・治療を選択したのか。正直言って、そのとき頭のなかにあったのは、「何がなんでも新著を完成させて、世に問いたい」という思いだけだった。新著とは、その後、『書いてはいけない』と題して出版され、ベストセラーになった書籍だ。